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「Aが言ったんだろ
偽彼女作った方がいいって」
「それはそうだけど……わ、私?釣り合わないよ、」
「……釣り合わないとか意味わかんねぇ
俺はAがいい。Aがいいから今こうして付き合ってくれって言ってるんだ」
どくん、どくんと胸が高鳴る
轟のことが恋愛的に好きとかそんなわけない……と、思う
轟は友達で、不器用で要領の良くない私にとってヒーローと恋愛なんて両立出来る気がしないから、恋愛なんて考えたこともなかった
なのに、今……
いや、でも……轟が、友達が困ってる
それなら助けるのがヒーローとして、友達としての最善策なんじゃないの?
「そんなの身に余る光栄だよ…」
「だから、なんでそんな謙遜するんだ
俺にとっちゃお前の方が魅力あるのに」
「そういうとこだよ、ほんとに……」
轟の差し出された右手に、そっと自身の手を乗せた
「A…」
「私でよければ。私を貴方の彼女にしてください」
ぎゅ、とその手が強く握られた
轟が嬉しそうに眉を下げていた
「よろしくな、ありがとう」
「こちらこそ…!こんなイケメンの偽でも彼女になれるなんてね!」
「……それはこっちのセリフだ」
「え?どういう意味、それ……」
「教えねぇ」
「え!?」
ぷい、とそっぽを向いてしまった轟にぐっと近付いて顔を見ようとするもまた避けられる
「もー!なんなの轟!」
「それも俺が言いてぇ」
「なんで!?」
轟意味わかんない!と大袈裟に怒ったような顔をすると轟がまた優しげな顔をする
「とにかく、俺の彼女としてよろしくな」
そんなふうに冗談めいて話す轟が珍しくて、怒った表情を維持することが出来なかった
「……っあはは!うん!もちろん!
私の彼氏さんのこと、全力を尽くして幸せにしてみせるよ
……あ、婚約破棄って意味でね?」
「……お、う。」
轟は一瞬びっくりしたような顔をして、こっちを向いた
「……頼んだ」
「まかせて!」
こうして、私と轟の"偽"恋人関係が幕を開けた。
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作者名:月亜 | 作成日時:2022年10月30日 20時