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「夏油はもうじき、君を本気で飼い殺そうとしてくるはずだよ。夏油の目的は君を手駒にすることだからね。そのためには君の自我や不要な記憶を取り除く必要がある。」
そのあたりは君も把握しているよね、と真人は聞いた。そのあたりとは、おそらく自我や不要な記憶の抹消、と言う部分だろう。
私は頷いた。薄々気がついていたことだけれども、真人の言葉を聞いて確信する。私が力を使うたび、私の記憶や感情は消えている。どれほど思い出そうと頑張っても、すこし前の記憶までしか遡れないのもそのせいだと思うし、感情もある一定の量以上を出力できていない感じはする。驚いた時なんかの不測の事態の時に意識が飛ぶのも、きっとそのせいなのだろう。
もう一つ把握していること。それは悪意は私の中で特別な感情だといこと。私が誰かを害したいと持っている時の感情だけは消されていないと言うことだ。この例外的な感情を除いて、私は人並み以上の感情を出せない体になっている。
どうしてそんなことになっているのか。その原因を探るための記憶はもうとうの昔に消えてしまっている。けれど今大事なのはそこじゃない。
「つまり、夏油は私を痛めつけ、自己回復させることで力を使わせたいってことですよね。」
そう、と真人は言った。
「それで君を使い勝手のいい人形にして、呪術師たちを殺し回らせるってこと。」
なんとも単純な策だ。たしかに、私が記憶や悪意以外の感情を失えば、私は目を見るだけで相手を殺せる殺戮人形になるだろう。相手に触れる必要がないと言う点も考えると、私は無差別かつ広範囲の人間を殺せるし、もしかしたら五条悟にもこの目は有効かもしれない。
そこまで考えて、私は彼のことを思い出した。
「五条悟は。」
「封印されてる。」
私が全てを問う前に真人はそう答えた。そしてその言葉は私に疑念を抱かせる前に、私の心に染み込んだ。どうやら助けは望めそうにない。
「安心してよ。」
真人は唐突にそう言った。
「俺だって、好きな子が他の男にいいように扱われているところは見たくないからね、助けてあげる。」
真人はそう言うと私の後ろに周り、私の手を取った。そして私の手に何かを握らせた。
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しょーどくえき - わ!すっごくおもしろいです!続きがとても楽しみです!頑張ってくださいね! (2021年6月20日 16時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり - 今は死滅回遊ですよ!!!続きがとても楽しみです!!! (2021年5月21日 20時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 無気力なおバカさん» コメントありがとうございます!この展開は読者様には不評かも、なんて考えている折だったので、これからの展開が楽しみというお言葉に救われました!更新頑張ります。 (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 糸野さん» コメントありがとうございます!スリルのあるなんて素敵な言葉をいただけて嬉しいです。更新が滞っていますがこれからもドキドキさせられるよう頑張ります! (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
無気力なおバカ - 面白いです。これからの展開がすごく楽しみです。キャラ達の関係とかもすごく好みです。更新頑張って下さい! (2021年1月2日 3時) (レス) id: 9900cccf42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柑橘 | 作成日時:2020年11月28日 17時