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ガタガタと木製の何かが動く音と、ギッと木材が軋む音が聞こえた。見えないから予想するしかないけれど、多分私の前に椅子を置いて座ったんだろう。

「どこまで把握してる?」

「野薔薇は、どうなったの。」

夏油の言葉を無視して、私は言葉を発した。

「どの程度まで自我が残っているのかも気になるところだ。」

「真人はどこ。」

「真人に力を使ったらしいね。壊相と血塗にも使っている。それなりの代償を支払っているはずだ。」

「野薔薇を、殺したの?」

最後の問いに、そいつは息を吐き、笑った。

瞬間、私の目の奥がカッと熱を持った。しかしその上から何かが私を押さえつけるようにし、まぶたを焼いた。

「ぐっ、ああああ!!!」

声を上げ痛みから逃れようと首を振るが、どうにもならない。この目隠し自体に細工がされているのだ。

「へぇ。」

夏油はそう呟くと立ち上がった。

「呪力を押さえ込む術を組み込んだ縄で拘束しているのに、まだ目が使えるのか。保険で貼ってみたが……念には念を入れておくものだね。」

そう言って夏油は私の目元に貼っているのだろう紙に触れた。きっと呪力に反応して熱を持つ札のようなものだろう。これのせいで目を封じられている。

私は見えないその男を睨みつけた。

睨み付けることしかできないのだ。正直、縄のせいか首より下はほとんど力が入らないし、呪力を込められるのも首から上だけだ。そして目は封印されている。

髪ならまだ、使えるかもしれない。けれど見えないし動きも取れないこの状況で相手に当たるかはわからない。

やるなら、ここぞと言う時に一度だけ、だ。

その時まで、私はこの体のうちに熱を留めておかなければいけない。苦しいけれど、それもこれもここから出るためだ。外に行くためだ。

私はその覚悟で、夏油傑と名乗った怪物を睨みつけた。

「思ったよりもイキが良さそうで、安心したよ。」

夏油はそう言ってまた、笑った。

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しょーどくえき - わ!すっごくおもしろいです!続きがとても楽しみです!頑張ってくださいね! (2021年6月20日 16時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり - 今は死滅回遊ですよ!!!続きがとても楽しみです!!! (2021年5月21日 20時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 無気力なおバカさん» コメントありがとうございます!この展開は読者様には不評かも、なんて考えている折だったので、これからの展開が楽しみというお言葉に救われました!更新頑張ります。 (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 糸野さん» コメントありがとうございます!スリルのあるなんて素敵な言葉をいただけて嬉しいです。更新が滞っていますがこれからもドキドキさせられるよう頑張ります! (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
無気力なおバカ - 面白いです。これからの展開がすごく楽しみです。キャラ達の関係とかもすごく好みです。更新頑張って下さい! (2021年1月2日 3時) (レス) id: 9900cccf42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柑橘 | 作成日時:2020年11月28日 17時

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