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ピシャ、ピシャっと私が歩くたび水が跳ねる。それの次は私が踏んだガラスが砕ける音が響いた。
下の方では先ほどまで大勢の悲鳴のようなものが聞こえていたが、今は何も聞こえない。だからより一層、小さな物音が広い地下全体に響き渡っていた。
血や内臓物でできた水たまりに破片が浮かんでいる。それがもはや人間のものなのか、それとも改造され化け物になったやつのものだったのか判別もつかない。
けれどここで惨劇が起こっていたことはわかった。
私は駅構内にある時計を確認した。時刻は９時３０分を過ぎている。ここに来るまでに遭遇した改造人間を処理したりして時間を取られ過ぎた。早く野薔薇を見つけに行きたいのだけれど。
私は今、３枚目の帳を前にして立っていた。
「……。」
果たしてこれが２枚目の術師を入れない帳なのか否か。もしそうだったなら詰みだ。こっちの帳かさっきの帳、どちらかの帳を壊さないことには外にも奥にも行けない。
私はそっと帳に手を伸ばした。そして触れようとした瞬間、帳が大きく波打つのが見えた。
「っ！！」
慌てて後ろに飛び、帳から距離を取る。黒い幕の波紋はやがて大きな人型になり、その姿を現した。
まず見えたのは男の手だった。大きくて白いその手と腕を繋ぐ手首には線のようなものが入っていた。
次に見えたのは体。黒一色の服を身にまとったその人の体は異様な呪力を発していた。
最後に、顔が出た。薄い冬の空のような色をした髪と左右で違う色をした瞳。顔にはつぎはぎの跡が広がっている。
みる人が見ればハロウィンのコスプレだと思うだろう。けれどそいつから溢れ出る呪力は紛れもなく呪霊のもので、そして私がいままで見て来たどの呪霊よりもずっと強いものだった。
「あれ？もう来てたんだ。」
そいつは私を見ていやらしく笑った。
「てっきり全部が終わった頃に来ると思ってたんだけど、意外と早かったね。」
やけにフレンドリーに話しかけるそいつを前に私は瞬きをした。瞬きも呼吸も、できるうちにしておくべきだ。
「……あなたが、アレを寄越したの。」
高専にやってきた例の化け物のことを思い出しながら、私はそう聞いた。
「うん。」
「どうして。」
私が端的にそう聞くと、男は何でもないような顔で言った。
「夏油がさ、君に会いたいんだって。」
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しょーどくえき - わ！すっごくおもしろいです！続きがとても楽しみです！頑張ってくださいね！ (2021年6月20日 16時) (
レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり - 今は死滅回遊ですよ!!!続きがとても楽しみです!!! (2021年5月21日 20時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 無気力なおバカさん» コメントありがとうございます！この展開は読者様には不評かも、なんて考えている折だったので、これからの展開が楽しみというお言葉に救われました！更新頑張ります。 (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 糸野さん» コメントありがとうございます！スリルのあるなんて素敵な言葉をいただけて嬉しいです。更新が滞っていますがこれからもドキドキさせられるよう頑張ります！ (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
無気力なおバカ - 面白いです。これからの展開がすごく楽しみです。キャラ達の関係とかもすごく好みです。更新頑張って下さい！ (2021年1月2日 3時) (レス) id: 9900cccf42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柑橘 | 作成日時：2020年11月28日 17時
