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その時。
「ん?」
化け物の背中に紫色の血で出来た文字が浮かび上がっていた。ミミズのような文字で書かれたそれはとても読みにくいけれどちゃんと人の言葉だ。それを読み取る。
「渋谷……ハロウィン……襲撃。」
ああ、なるほど。私は化け物の顔を見た。
化け物が流している血は間違いなく人間のものだ。けれどもこの背中の血は呪霊の血。おそらくこれは人間だったものが呪霊によって化物へと変容させられたものなんだろう。それを伝書鳩のように使った。
何のためになんて考えなくてもわかる。このメッセージを私に宛てるためだ。だって今呪術高専にいる呪術師は私しかいない。そんな私を渋谷におびき出して呪術高専に忍び込みたいんだろうか。
「ははっ。」
私は化け物の死体を蹴った。
行くわけがないだろう。ただでさえ私は五条先生に疑われているんだ。ここから抜け出して渋谷に向かうなんてして、問答無用で敵認定されても困る。
少し下の段に落ちた化け物の方に降りて私はもう一度足を振り上げた。その時、化け物がうめいた。
「こ、ろす。こここここころろろ、す。」
突然意味のある言葉をうめいたのを見て私は足を止めた。化け物はぐちゃぐちゃになった顔で私を見上げた。
「おとこも、おんな、も、じゅ、じゅつ、し、は、全員、ころ、す。ころすすすすすう!!!」
顎をガタガタと震わせながらそう言う化け物の目は暗く、自分の意思で言っているようには到底見えない。言わされているんだと直感し私は眉を潜めた。
そうまでして、私を呼び寄せたいか。
「そう。わかった。」
私は死体を踏み抜いた。ビチャっと小さな赤い水しぶきが立ち、化け物はようやく動きを止めた。それを見届けて私は階段を降り始めた。
私を渋谷に呼び寄せたいのが誰かは知らない。その目的もわからない。でも渋谷には野薔薇がいる。野薔薇も殺すと言うのなら、それを容認できるはずもない。
喧嘩しているし、もうしばらく話もしていないけれど、野薔薇を殺すことは誰であっても許さない。五条悟も知ったことか。
私は私の目的のために生きる。
私は簪についた血を振り落とし、渋谷へと駆け出した。
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しょーどくえき - わ!すっごくおもしろいです!続きがとても楽しみです!頑張ってくださいね! (2021年6月20日 16時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり - 今は死滅回遊ですよ!!!続きがとても楽しみです!!! (2021年5月21日 20時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 無気力なおバカさん» コメントありがとうございます!この展開は読者様には不評かも、なんて考えている折だったので、これからの展開が楽しみというお言葉に救われました!更新頑張ります。 (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 糸野さん» コメントありがとうございます!スリルのあるなんて素敵な言葉をいただけて嬉しいです。更新が滞っていますがこれからもドキドキさせられるよう頑張ります! (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
無気力なおバカ - 面白いです。これからの展開がすごく楽しみです。キャラ達の関係とかもすごく好みです。更新頑張って下さい! (2021年1月2日 3時) (レス) id: 9900cccf42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柑橘 | 作成日時:2020年11月28日 17時