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寮を出た私は薄暗い高専の道を一人で歩いていた。風が揺れるたびに木々が揺れている。いつも歩く高専の道とはいえ、薄闇の中木々の多い道を歩いていると視界の隅に存在しない化け物の姿が見えたような気になる。

せっかくのハロウィンなのだから、かわいらしいお化けの一匹や二匹くらい出てきてはくれないものだろうか。そしたら少しは気分が紛れるのに。

そんなことを考えながら意味もなく高専の結界内をぶらぶらと歩いていると、不意に何かの影が見えた。

その影には頭があり、肩があった。けれどもどうにも影が短い。それを不思議に思い実態を探るとその実態は影のすぐそばにいた。

四つん這いの人間が呪術高専に続く階段を這って登ってきていた。長い髪をだらりと垂らし腕の力で階段を登っているその姿は、前に虎杖くんが教えてくれた映画に登場する井戸から這い出てくる幽霊に似ている。けれどもそれは幽霊ではなく、きちんとした実体がある。かといってその造形は人間とも思えなかった。

異常に大きく膨らんだ手と対照的に萎んだ足。震える声で「あ、うううう。」と呻くそれはどちらかといえば、呪霊に近いものに見える。

倒していいんだよね。

私は首を傾げながら階段を上っている化け物を観察した。ここは高専の中にいくつかある出入口の一つで、結界の端っこだ。ちょうど階段の頂上からこちら側が結界内で、それよりあちら側が外側だ。

まだあれは外側にいるけれど、このまままっすぐ進めば確実に高専の中に入ってくる。そしたらアラートも鳴ってしまうし、待機中の唯一の呪術師である自分が対処しなければいけなくなる。

うん、やろう。

私は頭の簪を抜いて結界の外側へと出た。這いつくばっている化け物を見下ろせば、化け物は顔を上げ「あ、ああ。」とうめいた。

言葉も喋れないのか。私は持っていた簪をまっすぐ化け物の背中に突き刺した。

ギャアッと悲鳴をあげ、それは地面に倒れ伏した。あまりにも呆気ない。けれど息の根を止めたにもかかわらずそれの体は消えなかった。

「……最近、こういうの多い、な。」

この前の兄弟の呪霊もそうだった。消えてくれないと邪魔だし、かといってこれを学校内に運び入れるのもアラートが鳴りそうでめんどくさい。

もう階段から蹴り落としてしまおうかと考え、私は足を振り上げた。

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しょーどくえき - わ!すっごくおもしろいです!続きがとても楽しみです!頑張ってくださいね! (2021年6月20日 16時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり - 今は死滅回遊ですよ!!!続きがとても楽しみです!!! (2021年5月21日 20時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 無気力なおバカさん» コメントありがとうございます!この展開は読者様には不評かも、なんて考えている折だったので、これからの展開が楽しみというお言葉に救われました!更新頑張ります。 (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 糸野さん» コメントありがとうございます!スリルのあるなんて素敵な言葉をいただけて嬉しいです。更新が滞っていますがこれからもドキドキさせられるよう頑張ります! (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
無気力なおバカ - 面白いです。これからの展開がすごく楽しみです。キャラ達の関係とかもすごく好みです。更新頑張って下さい! (2021年1月2日 3時) (レス) id: 9900cccf42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柑橘 | 作成日時:2020年11月28日 17時

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