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伏黒君と縁がある土地だったおかげで、私たちは八十八橋という場所に目標を絞ることができた。
けれど八十八橋に張っても、呪霊の出現どころか残穢も気配も感じられなかった。
「ふりだしっスかね。」
新田さんはそう呟きながら腕を組み、考え込んだ。
「でも時間かけるのはマズくね?」
虎杖君がコンビニで買ったおにぎりの包装を取りながらそう言った。
「なんでよ?」
野薔薇が紙パックの飲み物にストローをさしながら聞いた。
「だって有名な心霊スポットなんだろ?呪われてる人はまだいるかも。しかも今ん所致死率100%。これ以上人死は勘弁だろ。」
その言葉に、野薔薇は「確かにね。」と呟いた。私もコンビニで入手した強炭酸水の蓋を回した。
プシュッと小さな破裂音に近い音がした時、新田さんが閃いた。
「!はやってたのはバンジーっスよね。“飛び降りる”って行為が鍵なんじゃないっスか?」
「それはもう虎杖で試しました。」
「え!!もしかしてあのビニール紐でとんだんスか!?」
「頭、おかしい、よね。」
私は炭酸水を口に含んだ。“強”とつくだけ合って、刺激的だ。
「あぁ!!いたーっ!!良かったー!!」
突然張り上げられた男性の声が響いた。見るとコンビニエンスストアの駐車場入り口に自転車二人乗りでやってくる人がいた。ペダルを漕いでいる男の人が「伏黒さーん!!」とこちらに声をかけていた。
今日訪れた中学校で見かけた伏黒君の後輩だった。
「八十八橋って言ってたから……!!本っ当良かった!!」
語尾がやけに強い後輩君の後ろには女性も乗っていた。緊張した様子で男の人の背後から顔を覗かせている。
「……藤沼?」
伏黒君は少し考えてから女の人の名前を呼んだ。どうやら伏黒君の同級生のようだった。自転車を漕いでいた子のお姉さんらしい。
「あの……森下さんって近所でお葬式やってて……その人と八十八橋のこと調べてるってこの子に聞いたから……何か関係あるのかなって……。」
藤沼さんは緊張した様子で伏黒君にそう聞いた。
「関係って?」
「だから森下さんが亡くなったことと橋が……。」
藤沼さんの言葉の端からは、不安が読み取れた。けれど呪いの話をするわけにもいかない。伏黒君は「関係ない。俺たちはただ。」と藤沼さんの考えを否定しようとした。しかしそのとき、彼女は言った。
「私、行ってるの。中2の時、夜の八十八橋に。」
野薔薇はあからさまに、「げっ!!」という顔をした。

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柑橘(プロフ) - 尊都さん» ご指摘ありがとうございます!変更させていただきました。またなにかお気づきの点があればコメントください。 (11月26日 3時) (レス) id: 3b878783b1 (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 稔米さん» ありがとうございます!五条先生とはギスギスして欲しいのでこのまま緩くやっていきたいです。 (11月26日 3時) (レス) id: 3b878783b1 (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - わかたくさん» ありがとうございます。更新頑張ります! (11月26日 3時) (レス) id: 3b878783b1 (このIDを非表示/違反報告)
尊都(プロフ) - 五条先生ってみんな下の名前じゃありませんでした? (11月26日 2時) (レス) id: 6a52012404 (このIDを非表示/違反報告)
稔米 - 好き過ぎます!なんかこれから色んな事実が発覚してくのかなーと楽しみにしておりマス!私は五条さんとの絡みが好きです!なんか甘々じゃない感じの…w (11月25日 22時) (レス) id: 861890d0d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柑橘 | 作成日時:2020年11月24日 1時