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「ほら。」
野薔薇はそう言いながら、私の口元にピザを運んだ。
「いい。いら、ない。」
「わがまま言わない。ほーら。」
「んー!」
私はカップに口をつけながら野薔薇の持つピザに向けてノーのサインを送った。
「ふはっ!!」
そんな私たちを見て、虎杖君は唐突に笑った。
「オマエら、姉妹みたいだな。」
「そうねー。」
私が食べないと悟った野薔薇は手に持っていたピザを自分の口に運びながらそう言った。パクッと一口、野薔薇がピザを口に含むのを私は何を思うでもなく眺めていた。
「ま、Aは私にとって本当に妹みたいなもんだから。」
咀嚼し終えてから野薔薇はそう言った。
「同郷なんだっけ?」
「う、ん。」
虎杖君の問いに私は頷いた。
「同じ村、に、暮らしてた。」
「へー。どんなとこ?」
「なんにもないクソ田舎よ。」
虎杖君の質問に野薔薇がそう返事をした。
「でも、野薔薇はいつも、新しいこと、教えてくれた、よ。」
過去のことを思い出しながら、私は口にした。
「川とか、山の、名前。お寺の場所、ゲームの遊び方、とか。」
あとコーラも、と私は付け加えた。
「そうね。出会った頃のAは本当に何も知らなかったから。私が時々Aを家から連れ出して教えてたの。」
「例の家か。」
伏黒君は眉を潜めながらそう呟いた。
「そ。Aはあの家にずっと閉じ込められてたから、外の世界のことなーんにも知らなかったのよ。だから私が時々この子を連れ出して遊んでたってわけ。」
「それって小松の家にはバレなかったのか?」
虎杖君の言葉に今度は私は答えた。
「バレてなかった、よ。野薔薇は上手、だから。」
「その辺はぬかりないわよ。」
野薔薇は新しいピザ片手にVサインを作って見せた。
「んじゃあ、小松はどうやってその家から抜け出して来たんだ?」
「コイツのおじさんとおばさん達を説得したわけじゃねーだろ。」
伏黒君は全てを知らなくても、なんとなく私のおじさんとおばさんが言葉で説得できるような相手ではないと悟ったらしい。
「家出か?」
「違う、よー。野薔薇が、私を、外に出して、くれたんだよ。」
ふふ、と笑みをこぼしながら私は自慢した。
「……Aのおじさんとおばさんは、呪いに殺されてんのよ。」
それを聞いて、伏黒くんと虎杖くんは真剣な表情になった。私はコップにもう一度口をつけ、コーラを飲み込んだ。
「それを祓ったのが私。もう二年も前のことだけどね。」
私は頷いた。
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柑橘(プロフ) - 尊都さん» ご指摘ありがとうございます!変更させていただきました。またなにかお気づきの点があればコメントください。 (2020年11月26日 3時) (レス) id: 3b878783b1 (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 稔米さん» ありがとうございます!五条先生とはギスギスして欲しいのでこのまま緩くやっていきたいです。 (2020年11月26日 3時) (レス) id: 3b878783b1 (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - わかたくさん» ありがとうございます。更新頑張ります! (2020年11月26日 3時) (レス) id: 3b878783b1 (このIDを非表示/違反報告)
尊都(プロフ) - 五条先生ってみんな下の名前じゃありませんでした? (2020年11月26日 2時) (レス) id: 6a52012404 (このIDを非表示/違反報告)
稔米 - 好き過ぎます!なんかこれから色んな事実が発覚してくのかなーと楽しみにしておりマス!私は五条さんとの絡みが好きです!なんか甘々じゃない感じの…w (2020年11月25日 22時) (レス) id: 861890d0d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柑橘 | 作成日時:2020年11月24日 1時