37 ページ37
「…………….。」
モニターに映る呪術師達と、交戦する呪い。
私はそれをじっと見つめていた。
草木を体に宿らせたその呪霊は狗巻先輩や伏黒君、加茂さん、禪院先輩、さらには東堂さんと虎杖くんらを相手にしていた。
とても強い呪霊だった。その呪霊はたいして焦ることも、怒ることもなく事務的に彼らを蹂躙していった。最後、虎杖君と東堂くんを相手にするまでは。
以前、虎杖君が殺された時に出会った呪霊とは違う。この呪霊はあれよりも意識が成熟している。だからこそ不可解だ。
この呪霊、何のために戦っているの。
強くなりたいからじゃない。これはまだ強さを求めるほど貪欲な心を持ち合わせていない。だからって、ただそこに人間がいるから戦ってるなんて、そんな短略的な思考でもない。どう考えてもこの呪霊は自分のためには戦ってない。つまりは……。
私は視線を動かし、モニターをひとつひとつを眺めた。そのうちの一つ、移動中の箒に乗る呪術師の女の子が映し出される映像の端に、神社が写った。
「あ。」
「どうした?」
冥冥さんが体を動かさずにこちらに聞いた、けれどその瞬間映像に映し出された景色が変わったのを見て、冥冥さんは息を漏らした。
「ああ、帳が上がったか。」
するすると、幕が上がるかのように下から上にと黒い闇が消えていく。その最中、私は人形の何かが神社の境内から消えたのを見た。
「……。」
私は冥冥さんと同じように息を吐いて、背をソファーに預けた。
なるほど。あれのためにこの呪霊は戦ってたのか。そんなことを考えながら、囮の草木の呪霊を眺めていたら、次の瞬間その呪霊は光に飲まれ消えていった。
五条先生の術式によって、地面ごと深く消し去られたのだ。
「一件落着!!」
モニターの中では五条先生が蒼い目を細め、満遍の笑みで親指を立てていた。先生はその後すぐにいつもの黒い目隠しを目元に当てていた。
995人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柑橘(プロフ) - 尊都さん» ご指摘ありがとうございます!変更させていただきました。またなにかお気づきの点があればコメントください。 (2020年11月26日 3時) (レス) id: 3b878783b1 (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 稔米さん» ありがとうございます!五条先生とはギスギスして欲しいのでこのまま緩くやっていきたいです。 (2020年11月26日 3時) (レス) id: 3b878783b1 (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - わかたくさん» ありがとうございます。更新頑張ります! (2020年11月26日 3時) (レス) id: 3b878783b1 (このIDを非表示/違反報告)
尊都(プロフ) - 五条先生ってみんな下の名前じゃありませんでした? (2020年11月26日 2時) (レス) id: 6a52012404 (このIDを非表示/違反報告)
稔米 - 好き過ぎます!なんかこれから色んな事実が発覚してくのかなーと楽しみにしておりマス!私は五条さんとの絡みが好きです!なんか甘々じゃない感じの…w (2020年11月25日 22時) (レス) id: 861890d0d1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:柑橘 | 作成日時:2020年11月24日 1時