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「避難区域10kmまで広げてください。」
伏黒君は運転席に座っている伊地知さんに向けてそう言った。それから、彼は私に目を向けた。
「小松。オマエは釘崎と一緒に病院に行け。」
「…….。」
私は伏黒君を見た。私より背が高い彼は私を見下ろしながら、じっと、睨み付けるように私を見ていた。
この後、伏黒君はあの特級、もしくはそれを倒した両面宿儺、虎杖くんのどれかと対峙するとこになる。虎杖くんであれば、万々歳。けれど特級、もしくは両面宿儺だった場合は、絶望的だ。
私がいたとしても、いなかったとしても。
私は伏黒君に頷いて見せた。
「伏黒君は?」
伊地知さんの声を聞きながら、私は車の後部座席に乗り込み、眠っている野薔薇の隣に座った。
「残ります。もしもの時、俺にはアイツを始末する責任があります。」
伏黒君の言葉を聞いても、伊地知さんは止めなかった。
「釘崎さんを病院へ送り届けたら、私もなるべく早く戻ります。」
伊地知さんはせめて、と思ってそう言ったみたいだけれど、伏黒君の方が冷静だった。
「いや、もう伊地知さんはいてもあんまり意味ないのげ、戻ってくるときは一級以上の術師と一緒にお願いします。いないと思うけど。」
伊地知さんは静かに肩を落とした。
伊地知さんは最後に伏黒君といくつか言葉を交わして、車を発進させた。向かうのは避難区域外の病院だ。
窓の外を眺める。先ほどまでいたあの場所とは違い、外の世界はとても穏やかだった。人のいない住宅街は閑静で、薄暗い闇に包まれている。人間が突然世界から消えたらこんな風になるんだろうか、なんて考えながら私は別のことに思考を巡らせた。
「小松さん。」
伊地知さんからの呼びかけに、私は目線を前に向けた。
「はい。」
「痛いところはありますか?」
私は少しの間停止した。痛いところ、ない。別に。どうしてそんなことを聞いてきたんだろうと思いながら、私は答えた。
「ない、です。」
「そうですか。」
伊地知さんは息を吐き出した。私は少しの間、野薔薇の方を眺めてから、もう一度伊地知さんの方を向いて口を開いた。
「なぜ、ですか?」
ルームミラー越しに伊地知さんが眉を上げるのが見えた。
「……すみません、何故とは?」
「気になる、のです。」
私は自分の思考を伊地知さんにぶつけた。
「どうして、あそこに、私たちを、派遣したのか。」
「……ですから、先ほども説明したように、この業界は人員不足が常で。」
「違う。」
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柑橘(プロフ) - 尊都さん» ご指摘ありがとうございます!変更させていただきました。またなにかお気づきの点があればコメントください。 (2020年11月26日 3時) (レス) id: 3b878783b1 (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 稔米さん» ありがとうございます!五条先生とはギスギスして欲しいのでこのまま緩くやっていきたいです。 (2020年11月26日 3時) (レス) id: 3b878783b1 (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - わかたくさん» ありがとうございます。更新頑張ります! (2020年11月26日 3時) (レス) id: 3b878783b1 (このIDを非表示/違反報告)
尊都(プロフ) - 五条先生ってみんな下の名前じゃありませんでした? (2020年11月26日 2時) (レス) id: 6a52012404 (このIDを非表示/違反報告)
稔米 - 好き過ぎます!なんかこれから色んな事実が発覚してくのかなーと楽しみにしておりマス!私は五条さんとの絡みが好きです!なんか甘々じゃない感じの…w (2020年11月25日 22時) (レス) id: 861890d0d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柑橘 | 作成日時:2020年11月24日 1時