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「遅かったな」
先ほどより少し低い声がして心臓が跳ねる。ばっと顔を上げると黒髪が目に入る。声の主はレイだった。
「歩いて、来てたのよ。森は…慣れていないから。」
「それで何か?」と言わんばかりにキツくなってしまうその言葉に見え隠れする棘を、ずっと吐いて吐いて吐いて吐き続けて。それでも今受け入れてくれると言ってほしい。そんな事を望む権利など私には無いのにな。
「いいんだよ、A。エマから聞いてると思うけど、話があるんだ。聞いてくれる?」
ノーマンの優しい声色に頷く。勿論そのつもりで来た。
しかしその「話」は、想像を絶するものだった。ここ
「ママが…」
いつしか震えは止まらず、心臓も随分と早く、強く脈打っていた。
優しいママが、愛してくれたママが。信じたくないけど、信じなくてはならない。それは彼らがそんな半端な嘘を、わざわざ私につくメリットなど何処にもないからだ。
「信じたくない。でも、信じなくちゃならないんでしょう。あなた達が言うんだもの。」
思った事を口にすれば、彼女たちは笑顔を浮かべて頷いた。
「それで、その話だけじゃないでしょう。もっと他にもあるんでしょう。」
その言葉を口にしたのはそう思ったからというのもあったが、それ以上に『そうであってほしい』と感じたからだった。
エマは勿論だといわんばかりに大きく頷くと、
「私たちで、逃げよう。」
と決意を固めた声でいう。辺りはぴりぴりとした空気を漂わせる。
───────なんだそんな事か。
私の答えなんて、決まっているじゃない。
Aはふっと微笑んだ。他の三人はそのあまりにも儚げな笑顔に一瞬で目を奪われてしまうほどに、柔らかで、心地よい笑みだった。
「私が逃げる理由は無い。真実を知ったところで、私が変わることは無いし。そもそも、私が逃げるって思ってた?」
本心だった。恐怖はあったが、むしろ安堵したほどだった。それが矛盾だとは気づいてはいたが、私を愛してくれたママは『演技だった』と思えば、考えるほど落ち着きを取り戻していくのが自分でも分かる。
これで私を愛してくれる人は居なくなった。楽に逝ける。
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蜜柑の樹(プロフ) - ヤシの実さん» ありがとうございます!ノーマンサイド…成程、またいつか書かせて頂きますね、ご意見ありがとうございます!凄く嬉しいです。是非今後とも応援よろしくお願いします! (2019年3月20日 22時) (レス) id: ece34a1d58 (このIDを非表示/違反報告)
ヤシの実 - 初めまして!「作戦の行方〜」と「君の幸せを〜」が大好きです!!レイサイド切なかったです、、、ノーマンサイドもお時間があれば読んでみたいな〜と思ったり(笑) 勿論!他の作品もとても素敵でした^^* 更新楽しみに待ってます! (2019年3月19日 21時) (レス) id: ad6942667d (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑の樹(プロフ) - moca.sararenonさん» おわああああ!めっちゃ嬉しいです!更新…はい。頑張ります!(ちょっとテストだったもので…(言い訳)) (2019年3月2日 17時) (レス) id: ece34a1d58 (このIDを非表示/違反報告)
moca.sararenon(プロフ) - とっても面白いです!!!!更新頑張ってください!すごく読みやすくて、一気に読んでしまいましたああ!更新頑張ってください! (2019年3月1日 15時) (レス) id: 86f2d024d7 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑の樹(プロフ) - 暁ーあかつきーさん» 早速ありがとうございます!ご期待に添えるよう頑張ります! (2019年2月5日 22時) (レス) id: ece34a1d58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑の樹 | 作成日時:2018年8月8日 11時