赤色の夢 ｢N｣ ページ13
・
赤色の夢を見た。コニーの姿を見てから、いつもの事。
最近じゃ夜眠ることすら怖くて、それでも気がつけばいつの間にか目を閉じ、そして辺りは紅に染まり、寒気がして、自分の汗をどっぷり浴びながら朝を待つ。
どんな夢を見ていたか、というのは目を開けた途端に全て吹き飛ぶ。忘れ去ってしまう。覚えているのは｢色｣と｢吐き気｣だけ。起き上がったらついつい口に手をやってしまう。気が抜けると何も残っていない胃から胃液だけが飛び出してきそうなほど。
｢何かあった？｣
今日はいつも以上に気持ち悪かったからだろうか顔色が悪かったようで、ノーマンに声をかけられる。
｢何にも。｣
と軽く受け流そうとすると、｢嘘だ。｣とじっと見つめられる。その眼は獲物の様子を伺う獣のようで、｢しまった｣と思ってももう遅い。今の自分はまさに蛇に睨まれる蛙の如く。金縛りにあったかのように１ミリたりとも動けない。
｢顔色も悪いし、朝も今日唸ってたよ。僕とエマとレイの名前を呼んでね。何にもないわけがないよね、A？｣
｢そんなはずない｣と言いかけて、｢そ｣で止まった。まさか、そんな寝言を言っていたとは。
｢…んなに恐ろしい夢…｣
ノーマンに聞こえない声で呟いたつもりだったが、聞こえていたらしい。
｢夢？何を見たの、
｢赤｣
｢赤色の夢｣
そう言えば、目の前の彼はきょとんとする。駄目だ、思い出しただけで胸が痛い。全体が熱くなる。
『こにー…やめて、ママ！救けて！』
『だめ……エマ、レイ、ノーマン！しな、死んじゃ、死なないで、やめて、』
『う…うそだ、皆、きょうだいが、家族が、皆…ぁ…』
ああ、そうだ。一瞬にして今朝の夢がフラッシュバックする。赤色は血の色だ。途端咳き込む。おかしい、喉がおかしい。息が通らない。声が出ない。
｢のーまん｣
口を動かす。音はない。
｢馬鹿、そんなになるまで、隠して。…A、ごめん、本当に。｣
ノーマンが頬を撫でる。何かを拭うようにして。慌てて自分でさすれば、濡れた。
自分は泣いていたのだと、初めて確認する。
視界からノーマンが消える。途端体が温まる気がした。そして、肩に生ぬるい熱を感じる。
｢もっと頼ってくれても、いいんだよ。むしろ、お願いだから、頼って欲しい。｣
ああ、こういう所。ノーマンの優しさと温もりに包まれて、私は弱くなってしまうのに。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 89人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蜜柑の樹(プロフ) - ヤシの実さん» ありがとうございます！ノーマンサイド…成程、またいつか書かせて頂きますね、ご意見ありがとうございます！凄く嬉しいです。是非今後とも応援よろしくお願いします！ (2019年3月20日 22時) (
レス) id: ece34a1d58 (このIDを非表示/違反報告)
ヤシの実 - 初めまして！「作戦の行方〜」と「君の幸せを〜」が大好きです！！レイサイド切なかったです、、、ノーマンサイドもお時間があれば読んでみたいな〜と思ったり(笑) 勿論！他の作品もとても素敵でした^^* 更新楽しみに待ってます！ (2019年3月19日 21時) (レス) id: ad6942667d (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑の樹(プロフ) - moca.sararenonさん» おわああああ！めっちゃ嬉しいです！更新…はい。頑張ります！(ちょっとテストだったもので…(言い訳)) (2019年3月2日 17時) (レス) id: ece34a1d58 (このIDを非表示/違反報告)
moca.sararenon(プロフ) - とっても面白いです！！！！更新頑張ってください！すごく読みやすくて、一気に読んでしまいましたああ！更新頑張ってください！ (2019年3月1日 15時) (レス) id: 86f2d024d7 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑の樹(プロフ) - 暁ーあかつきーさん» 早速ありがとうございます！ご期待に添えるよう頑張ります！ (2019年2月5日 22時) (レス) id: ece34a1d58 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蜜柑の樹 | 作成日時：2018年8月8日 11時
