英斗総合病院。

☆ ページ38

あなたside




安「あれ〜？

全然ご飯食べてへんやん！

アカンで？

たくさん食べへんと大きくなれへんよ？」


(……またそれ…………。)


"たくさん食べへんと大きくなれへんで？"


"大きくなったらだんだん身体も
強くなってくからな！"


小さい頃から何度も何度も言われた言葉。


その言葉を信じて、頑張ってきたのに…。


「……………………じゃん……」


安「ん？何？」


「大きくなったって結局また入院して…

何も変わらないじゃん！！泣」


私は絶対に言ってはいけない言葉を
口走っていた。


言ったらダメ、そう思うのに
自分ではもう止められなくて…。


「先生の嘘つき！！泣

大きくなったら身体強くなるって
言ってたのに！！

だからご飯だって頑張って食べてたし
お薬だって注射だって頑張ってたのに…。

なのに大きくなったって
またこうやって入院して…っ

もうこんな身体いや！！泣」


安「Aちゃん……」


「ご飯なんていらない！！

この点滴も……全部いらない…っ！！泣」


ガシャンッ


安「ちょっ、アカンって…」


私はご飯のトレーを振り払って
床に落とし、
腕に刺さっていた点滴の針を
自分で引き抜いた。


「先生も出てって！！泣」


そう言ってベッドに潜り込む。


安「ん……わかった…。」


カチャカチャと床に落とした食器が
片付けられる音が聞こえてたけど
聞こえないふりをしていた。


安「…ほな………おやすみ。」


一瞬だけ見えた章大先生の表情が
すっごく悲しそうで…。


章大先生が病室から出て行った後
私の中には後悔しか残らなかった。


(……私、最低だ…………。

……こんなこと言うつもりじゃ

なかったのに……っ…………泣)


体調が悪いとき、熱が出て苦しいとき、
いつも傍にいてくれたのは
章大先生だったのに。


章大先生に八つ当たりなんて
絶対しちゃいけないことだったのに。


本当は章大先生に傍にいて
『大丈夫やで』って
頭をなでてほしいのに…。


後悔したってもう遅い。


章大先生を悲しませてしまった…。



(……腕…………痛い…………泣)


点滴の針を無理やり引き抜いた所は
血がにじんでいて、ズキズキと痛んだ。


「……うぅっ………ﾋｯｸ……ｸﾞｽｯ……(泣)」


久しぶりの病室にひとりぼっちで
寂しくて心細くて。


もう章大先生は私になんか
優しくしてくれないよね…。


本当に私、最低だ…。


私はしばらくひとりぼっちの病室で
泣き続けた。

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あずきいろ

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