1話 寝起きの悪い幼馴染 ページ2
眠い。今日ももう少し眠れたはずなのに、態々早起きして支度をする。
人より寝起き悪いのは自覚済みだが、私を上回る寝起きの悪さの幼馴染のために今日も早く起きなければならないのだ。
「おはようございます〜」
もう自宅と同じぐらい手に馴染んだドアを開ける。バタバタと忙しそうに歩き回る冬美さんに挨拶して、目的の部屋へと足を進める。
もう幾度となく通ったこの木造の廊下もキィキィ小さく音を立てて歓迎してくれる。
「起きてる〜?」
返事には期待せずとも一応声をかけて部屋に入ると膨らんだ布団が目に入る。
いつもの如く毛布を引き剥がそうとすると、なかなか手応えがない。
「焦凍、起きて!学校遅れるでしょ!」
ん〜、という唸り声が布団の中から聞こえる。起きる気は全くないようだ。力ずくで布団を引っ張ると、突然引っ張るのを阻止していた力がなくなって後方に倒れそうになる。
「わわ!」
すると腕をぐいっと引っ張られて今度は前方に毛布ごと倒れ込む。そのまま引きずり込まれて布団の中に入ると、目を瞑ったまま眠る幼馴染。
筋の通った高い鼻をつまんで暫くすると、んぅ〜とくぐもった声が聞こえる。
パチ、と瞼を開けた目の前の幼馴染は、私だと確認すると再度目を閉じて腰を引き寄せる。
おいおいまだ寝るつもりか
「焦凍、いい加減起きて」
バンバン胸板を叩くと、そこをさすって「いてぇ」と声を漏らす焦凍。漸く起きる気になったようで、のそりと起き上がる。
私も起き上がると、眠たそうに横にゆらゆら揺れる焦凍は、私の肩に顔を埋めた。
曲がりを知らないサラサラな髪が鎖骨辺りをくすぐる。
「あとちょっとだけこのまま寝かしてくれ...」
くそぅかわいい、
焦凍の可愛さに負けそうになったけれど、気を確かにして、昔より格段に大きくごつくなった体を無理やり立ち上がらせる。
するとゆっくりと動き出した焦凍の手を引っ張って廊下を出、居間に向かう。
「あれ、佑月ちゃん来てたの!ごめんね、私もう出るから、焦凍のことお願いね〜!」
"焦凍のことお願い"そのような言葉、轟家の人間に何度言われたことか。
はーい、と気の抜けた返事をして、いってらっしゃいと冬美さんを玄関まで見送ると、行ってきます!といつもの笑顔で返されて、家から出ていった冬美さん。
冬美さんの笑顔は素敵だなぁ、
毎朝の活力になっている彼女の笑顔に頬を緩ませると、焦凍のことを思い出して慌てて居間に戻る。
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ミルフィーユ - 終わりなんですか...?悲しいですが、すっごくほっこりするお話でした。 (2020年7月3日 19時) (レス) id: 9176ab7d5f (このIDを非表示/違反報告)
あるじゃん(プロフ) - りるるさん» コメントありがとうございます!大変励みになります...!頑張ります! (2020年6月1日 2時) (レス) id: 99f9589e9d (このIDを非表示/違反報告)
りるる(プロフ) - 尊い(*´∇`*)応援してます!! (2020年5月31日 23時) (レス) id: 335947b1ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あるじゃん | 作成日時:2020年4月17日 0時