14節目 ページ31
ルムジムはそのまま続けた。
「今、おんしの目の前には、何があるんじゃ。昔の、家族の酷い思い出か。それとも、
守れなかった妹の両足か。叶わないと決め付けた、諦めた夢か。」
違うだろう。
そう言って、ルムジムは琉美の顔を両手で挟んだ。
目と目がパッチリと合い、まっすぐに覗き込む。
「今、おんしの目の前にいるのは、わしじゃ。ほかでもない、このわしじゃ。わしの眼を見ろ。」
琉美の焦点の会わない瞳と、ルムジムの双方違う色の瞳が、一直線につながっている。
それでもどこか、琉美の瞳は違うところを見ているような気がした。
そんな琉美に語りかけるようにして、ルムジムは話し続ける。
「わしは、嬉しかったぞ。同い年の友達が出来て。飴玉を渡したときに、ちょっぴり笑う、
おんしの顔が好きじゃった。それだけで、いいではないか。」
琉美は目をぱちくりとさせ、ルムジムを見ている。
「それが意味では駄目なのか。それでもいらない子だというのか。のう、ミア。」
友達の声では、響かないのか。
悔しそうな、搾り出すような声だった。
「わしは、優しいおんしを好ましく思ってるぞ。友人として誇らしく思う。だから、悔しい。
おんしがそうやって沈んでいくとこを見るのが、悔しいぞ。」
ルムジムは堪えきれなくなったように、ナイフを拾い上げて、ミアに背を向けた。
「これは預かるぞ。一人で少し、考えるが良い。」
一人残された病室で、琉美は頬に手を当てた。
じんわりと痛みは残っていて、鉄の味も口の中に続いている。
こんな張り手は、いつ振りだったろう。
でも、姉の張り手とは、どこか違った。
一体、どこが違ったのだろうか。
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ゆずぽん(プロフ) - 実麗@受験生(建前)さん» あああ、ありがとうございます!そう言っていただけると幸いです……! (2017年11月26日 22時) (レス) id: 557f97ce01 (このIDを非表示/違反報告)
実麗@受験生(建前)(プロフ) - ゆずぽんさん» いえいえ!格好いいアクションシーンに一役買えただけでも嬉しいですし (2017年11月26日 18時) (レス) id: 58144b90d3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずぽん(プロフ) - 実麗@今年の誕プレは9mm口径モデルガンだったさん» ありがとうございます!折角貸してくださったのに、出番少なくてすみません・・・・・・。 (2017年11月26日 17時) (レス) id: b5c0886d76 (このIDを非表示/違反報告)
実麗@今年の誕プレは9mm口径モデルガンだった(プロフ) - 完結おめでとうございます!アンタレスを使って頂いてありがとうございました〜*^^* (2017年11月26日 9時) (レス) id: 80fcad1283 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずぽん(プロフ) - ありがとうございます!使わせていただきます! (2017年11月11日 20時) (レス) id: b5c0886d76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆずぽん | 作成日時:2017年9月13日 0時