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真っ白い壁紙の、四角い部屋の中。

ぽっかりと開いた窓からそよ風が入ってきて、カーテンを揺らしている。

その近くに置かれた花瓶を見ると、花がその首をもたげて、光に向かってあくびをしていた。

視線を戻し、ベッドの上に眠っているその人を見る。

美しい銀灰色の髪は、誰かが梳かしてくれたのだろうか、銀の紗の様に光を反射している。

「なんじゃ、夜美。まだここにおったのか。」

ガラリと引き戸が開いて、老人のような口調で、声が響いた。

そちらを見ると、全体的にピンクのファッションの、前髪が長い少女が、

枕と錠剤の入ったビンを抱えながら、ドアのあたりに立っていた。

サダルメリクと呼ばれる、姉が世話になった魔法少女だ。

姉がよく、メリクと呼んで、話していたのを覚えている。

夜美が問にこくりと頷く。

そうするとメリクは、少し呆れたように、溜息を付いた。

「昼飯は食べたのか?ちゃんと水を飲んでいるか?」

「お水は、たまに飲んでます。」

夜美が答えると、今度はメリクは、花瓶とともに置かれた水差しに目を向ける。

きゅっ、と顔をしかめて、少女は歩み寄ってきた。

ぽすん、と頭に枕を押し付けられる。

「水を飲むどころか、昨日から一度も寝ておらんじゃろう。」

「……。」

目を逸らすと、メリクは夜美が乗っている車椅子を押して、部屋を出るドアへと向かい始めた。

「少し寝てこい。ミアが起きたら、真っ先におぬしに知らせよう。」

こういうとき、脚が使えないのは、すこし不便かもしれない。

「おぬしまで体調を崩されてはかなわん。何より、ミアが一番悲しむぞ?」

「……お姉ちゃん、ほんとに私のこと、心配するかな。」

「夜美。」

家族じゃないのに。

その最後の一言を言う前に、メリクが遮った。

「疲れておるじゃろう。布団、干してばかりじゃから、ふっかふかじゃ。」

それ以上何も言うな、と言いたげに、メリクは遮った。

夜美ももう、それ以上、何も言わなかった。

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設定タグ:魔法少女は星に詠う   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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ゆずぽん(プロフ) - 実麗@受験生(建前)さん» あああ、ありがとうございます!そう言っていただけると幸いです……! (2017年11月26日 22時) (レス) id: 557f97ce01 (このIDを非表示/違反報告)
実麗@受験生(建前)(プロフ) - ゆずぽんさん» いえいえ!格好いいアクションシーンに一役買えただけでも嬉しいですし (2017年11月26日 18時) (レス) id: 58144b90d3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずぽん(プロフ) - 実麗@今年の誕プレは9mm口径モデルガンだったさん» ありがとうございます!折角貸してくださったのに、出番少なくてすみません・・・・・・。 (2017年11月26日 17時) (レス) id: b5c0886d76 (このIDを非表示/違反報告)
実麗@今年の誕プレは9mm口径モデルガンだった(プロフ) - 完結おめでとうございます!アンタレスを使って頂いてありがとうございました〜*^^* (2017年11月26日 9時) (レス) id: 80fcad1283 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずぽん(プロフ) - ありがとうございます!使わせていただきます! (2017年11月11日 20時) (レス) id: b5c0886d76 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆずぽん | 作成日時:2017年9月13日 0時

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