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10節目 ページ11

琉美は溜息を吐きながら、昼食のサンドイッチをも食べていた。

(なんだか、調子悪いな。)

先ほど、唐突に姉のことが頭をよぎった。

いつもなら、姉のことを考えても、あそこまで息が詰まることはないのだ。

そもそもの話、姉のこと自体、思い出すことが久しいことだというのに。

水筒から水を呷って、一息つく。

ぼうっとした頭の中に、思い出したくもない過去が黒々とした感情と共に湧いてくる。

〈もう、どうして出来ないのかしら。もっとちゃんとして、奈美を見習いなさい。〉

〈いいこだなぁ、奈美。父さんは嬉しいぞ。琉美も姉さんを見習って、頑張るんだぞ。〉

〈もう妹がいて、貴方もお姉ちゃんなんだから。奈美と同じように、我慢を覚えなさい。〉

いつも、いつも、いつも。

姉さんのことばかり。あの人がどれほど、私を蔑んでいたか。

それを知りもしないで、いつも姉さんのことばかり。

きっと、生まれたときから決まってたんだ。

どれほど勉強しても、難しい本を呼んでも、私は姉さんには勝てない。

私は。

「ひゃああぁ!」

誰かの悲鳴に、ハッと思考がクリアになる。

そちらを見ると、何かに怯えるように小さな肩を震わせている少女の姿があった。

どうやら、芋虫をどけたいが、触るのが嫌なようだ。

「マイアさん、大丈夫ですか?」

琉美はすぐにそちらに駆け寄って、マイアの頭からひょいと芋虫を摘まんで、

少し離れた草陰に転がした。

「た、助かった……ありがと……ミア姉……。」

マイアはパステルブルーの瞳に少し涙を滲ませながら、琉美に礼を言った。

今まで芋虫の乗っていた空色の柔らかな髪をぽんぽんと払って、琉美は目を細めた。

「大丈夫でしたか?ちょっと、驚いちゃいましたよね。」

柔らかく髪を撫でる琉美の手に、マイアが、もっととねだるように柔らかな髪を押し付けてくる。

それが可愛らしくて、琉美はマイアの気がすむまで、その頭を撫でていた。

「ミア、姉……ありがと……。」

「いいえ。こちらこそ、まぁ、なんか……私なんかで、すみません……。」

「なんで……そう、なるの……。」

時折出てくる琉美の自虐発言に、マイアは冷静に言葉を返してくる。

マイアは最後に琉美の頭を撫でて、ありがと、とひとこと言って、

弟を探してくると行ってしまった。

(お礼を言いたいのは、こっちなんですけどね。)

琉美はほったらかしになっていた弁当を片付けて、午後の授業の準備を始めた。

11節目 ※ややグロテスク注意※→←9節目



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設定タグ:魔法少女は星に詠う   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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ゆずぽん(プロフ) - 実麗@受験生(建前)さん» あああ、ありがとうございます!そう言っていただけると幸いです……! (2017年11月26日 22時) (レス) id: 557f97ce01 (このIDを非表示/違反報告)
実麗@受験生(建前)(プロフ) - ゆずぽんさん» いえいえ!格好いいアクションシーンに一役買えただけでも嬉しいですし (2017年11月26日 18時) (レス) id: 58144b90d3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずぽん(プロフ) - 実麗@今年の誕プレは9mm口径モデルガンだったさん» ありがとうございます!折角貸してくださったのに、出番少なくてすみません・・・・・・。 (2017年11月26日 17時) (レス) id: b5c0886d76 (このIDを非表示/違反報告)
実麗@今年の誕プレは9mm口径モデルガンだった(プロフ) - 完結おめでとうございます!アンタレスを使って頂いてありがとうございました〜*^^* (2017年11月26日 9時) (レス) id: 80fcad1283 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずぽん(プロフ) - ありがとうございます!使わせていただきます! (2017年11月11日 20時) (レス) id: b5c0886d76 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆずぽん | 作成日時:2017年9月13日 0時

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