さらば35点 ページ8
『…ごめん、離して』
「…ちゃんと…話、聞いて」
『手、退けて』
「Aっ…！」
『廉』
「…、」
『、じゃあ』
我ながら卑怯だと思う。
廉、とその名を呼べば私を掴むその力が弱まることをわかっていた。
まだその場から動けずにいる永瀬から背を向けて私たちを完全に遮断するように、遮断できるように保健室の扉をピシャリと閉めた。
────ああ、教室に戻る気になれない。
逃げるように、かつて彼が私を拒んだように私も彼を拒んでしまった。
罪悪感、それが私を支配していた。
もう、永瀬は教科書を借りにこないかもしれない。
もう、完璧に仲直りできなくなったかもしれない。
いいんだ、それでいいんだ。
そう、心に決めても永瀬は、また。
「A」
『…、永瀬』
「教科書貸して」
『なん、で…』
拒んだと言うのに。
逃げたと言うのに。
翌日の金曜日、彼はまた私に教科書を貸すように頼む。
「…無くしてん。教科書。…ほら、授業始まんで」
『あ、、うん』
彼の元へ教科書を渡そうとした時、意味がわからないと書いたことを思い出し、その手を止めた。
なんだか少し、恥ずかしい。
彼を拒んだというのに私は彼のメッセージに返信をした。つまり彼からまた返信が来ることを前提にあの文字を書いたのだ。
手を止めた私を不思議に思ったのか永瀬が心配そうに私の名前を呼ぶ。
『ごめん、…はい』
「うん、せんきゅ」
ふと、永瀬の手に握られる教科書にプリントが挟んでいたのに気づく。
あれは、もしや…
『あ、ちょ、なが』
永瀬、と言いかけた声はチャイムによって遮られてしまった。まずい。これはまずいぞ。慌てて挟まれているプリントを取り出そうと手を伸ばすが永瀬がクラスへ戻ろうと体の向きを変えたことにより届かなかった。
「やっべ、、っと、後で話聞くから」
じゃ、と片手を上げて走っていった永瀬。
いやいや違うんだよ永瀬廉。
私は君と話がしたいんじゃないんだよ。
その、あなたが今持ってる教科書に挟まれてる35点のテストを回収したいだけなんだよ…！！
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さくさくぱんだ(プロフ) - 完結おめでとうございます！読み度涙が止まりませんでした…。続編是非読みたいです!!!! (2020年1月3日 5時) (
レス) id: e39a486ce6 (このIDを非表示/違反報告)
ふみか(プロフ) - 完結おめでとうございます。続編本当に待ってます！！！！！！一生のお願い！笑笑 (2019年12月15日 23時) (レス) id: cdb1cf462c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - 完結おめでとうございます！afterstoryぜひ読みたいです☆ (2019年12月15日 15時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
寧々(プロフ) - 思わず一気読みしてしまったんですが、泣いてしまいました(;o;)是非after story読みたいです！ (2019年12月15日 13時) (レス) id: dfd709edb9 (このIDを非表示/違反報告)
ちな - 完結おめでとうございます！最後キュンキュンもしたし、涙も出てきて………時間があるのなら、アフターストーリー読みたいです！楽しみにしています！！ (2019年12月15日 9時) (レス) id: 047315094b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柚木 | 作成日時：2019年10月16日 22時
