コップ ページ29
テストがある日はいつもお昼ご飯を家で食べていた。
今日も予め用意しておいた冷凍パスタをレンジにぶち込みマニュアル通りの操作をした。
途端、ピンポーンと家の中に軽快な音が鳴り響く。なんだかデジャブだ。そーっと玄関を開けたらコンビニ袋を掲げた永瀬がいた。だから、静かに閉めた。
「はっ、ちょ、」
しかし永瀬によって遮られたためそれは叶わなかった。彼が好き、とまではいかないが確実に男として見てしまっている私は今永瀬を家にあげる気にはならない。
『…なに、』
「…そんなにテスト悪かったん？飯食おうや。ええやろ別に」
『やだ。…って言っても入る気でしょ』
「わかっとるやん。邪魔すんでー」
やはり力の差は大きかった。
踏ん張っていたものの簡単に開けられてしまう。
私の目の前を素通りしてズカズカと入り込みまるで自分の家かのようにソファにずかっと座った永瀬を見てため息をつく。
足まで組みやがって。それが妙に様になっていて変に意識してしまう。
深くため息をつくと解凍が終わったのだろう、レンジがこれまた軽快な音を立てた。
「あ、A麦茶ある？」
『あるよ』
「用意するわ」
『あー、ありがとう』
パスタをお皿に移す私のすぐ後ろで永瀬が食器棚を覗いていた。自分のコップを探しているのだろう。どれにすっかなーという声が聞こえたが答える気にはならなかった。
「これめっちゃかわええやん」
永瀬が取り出したのはドナルドのコップだった。
確かそれは近藤に貰ったやつだ。
『それ、貰い物』
「へー、誰から？」
『近藤』
「…は、あいつ？なんで」
『なんでって…付き合ってた頃に、』
ゴン、という音がした。
何事かと音が響いた床に目をやると永瀬が持っていたはずのコップが転がっていた。
よかった、割れてない。
拾おうと伸ばした手は永瀬の手によって掴まれてしまった。
『え、ちょ、永瀬？』
腕を掴まれたまま壁際に追い込まれる。壁ドンというやつだろうか。腕を掴まれたままだから腕ドン？いや、わかんないけど。
至近距離にある永瀬の端正な顔をまじまじと見つめる。なにか気に触ることでもあったのだろうか。
「…俺知らんのやけど」
『いや、そりゃ話してなかったからね？』
むっすーと不機嫌になる永瀬にハテナしか出てこない。
私に全く伝わっていないのがわかるのだろう、永瀬はもっと不機嫌そうな顔をした。
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さくさくぱんだ(プロフ) - 完結おめでとうございます！読み度涙が止まりませんでした…。続編是非読みたいです!!!! (2020年1月3日 5時) (
レス) id: e39a486ce6 (このIDを非表示/違反報告)
ふみか(プロフ) - 完結おめでとうございます。続編本当に待ってます！！！！！！一生のお願い！笑笑 (2019年12月15日 23時) (レス) id: cdb1cf462c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - 完結おめでとうございます！afterstoryぜひ読みたいです☆ (2019年12月15日 15時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
寧々(プロフ) - 思わず一気読みしてしまったんですが、泣いてしまいました(;o;)是非after story読みたいです！ (2019年12月15日 13時) (レス) id: dfd709edb9 (このIDを非表示/違反報告)
ちな - 完結おめでとうございます！最後キュンキュンもしたし、涙も出てきて………時間があるのなら、アフターストーリー読みたいです！楽しみにしています！！ (2019年12月15日 9時) (レス) id: 047315094b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柚木 | 作成日時：2019年10月16日 22時
