･ ページ12
．
「あ、ねぇ、齋藤さん？」
「え、あ、…」
肩を捕まれ振り向けば海で見かけた赤髪くんがいた。
上履きの色を確認する。彼は先輩だった。
「岸くんいる？」
「え、っと、永瀬──友達と購買行ってると思います。」
「あー、じゃあこれ俺からって言って渡しといてくんない？」
「これって、」
「入部届け。アイツ急に部活辞めちゃったからさ？」
「辞めた、んですか？」
「うん。知らなかった？」
「知らなかったです」
「齋藤さん岸くんと仲良いって前に聞いたから岸くんからなんか聞いてると思ったけど、そうでもなかったね。まあいいや。頼んだよ」
無理矢理私の胸に押し付けてきた紙を慌てて取れば赤髪先輩はこちらを見向きもせずに少し離れたところに立っていた女の人のところへ向かった。
見覚えがあった。
あれは、サエキ先輩だ。
するりと彼の腕に巻き付き仲良さげに歩く彼らはカップルだろう。優太は、叶わない恋をしてしまったのだろうか。
「…A？なにしてんの？」
「え、あ、い、いや？なんも？」
優太の視界に2人が映らないようにと背伸びをするが優太の背には叶わなかった。
しっかりと、優太はその2人の背中を見つめていた。というよりも、睨んでいた。
「…お前、あの人達と話した？」
「あの人達って？」
「イワゲンとサエキ先輩。話した？」
「いや、えっと、赤髪の人だけ」
「なんて言われた？」
「これ、俺からだって言って渡してって。…優太いつ部活辞めたの？」
「ふーん、せんきゅ。ちょっと前。飽きちゃった」
その笑顔はこれ以上踏み込んでくるな、という合図だった。ずっと一緒にいたから些細な変化にも気づいてしまう。気づきたくないことまで気づいてしまうそれは私にとってはあまり好ましいと思えなかった。
優太は教室に入るやいなや入部届けをくしゃりと潰してゴミ箱に突っ込んだ。
なにしてるの、と駆け寄ろうとしたところを永瀬に止められる。
「こればかりはAちゃんの領域やないで」
「どういうこと？」
「優太には何がなんでも守りたいやつがあんねん。その為にはあの二人の存在が邪魔ってわけ。わかった？」
「…いや、全然わかんないんだけど」
「とにかく、Aちゃんは優太の隣で笑っときゃええねんて。…あぁ、あと俺から忠告な。あの二人とは絡むな。」
そう言い放った永瀬は、私が知ってる永瀬なんかじゃなかった。
．
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 130人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Kaede | 作成日時：2019年9月24日 20時
