41 警告と愚痴〈五条side〉 ページ41
「それはそうと悟さん」
厳しさを孕んだ声音で呼ばれて身構える。
面倒な小言を言われる前兆だ。
「呪術総監部からまた警告がきていました。今度は一体何を仕出かしたのですか？」
「そんなの無視すりゃいいだろ。いつもの事だ。頭固いんだよ、あの爺共は」
すぅ…パアァァン！！
「いってぇ！ 呪力量、増やしたな！？」
「せ・つ・め・い！」
相変わらず、鞭みてぇな呪力。
俺の無限の隙を付いてくる。
ガキの頃からずっと、今でもこの平手打ちは苦手だ。
小柄ながら存在感と威圧感たっぷりの母親を前に、自白剤でも飲まされたように、言葉が口をついて零れ出す。
「上の連中が、Aを預かるって言い出したんだ」
「A…」
「俺の恋人だよ。なりたてだけど」
「特別な子なの？」
「無意識に呪いを引き寄せて、無自覚で浄化してる」
「！？」
「その力をなぁんにも分かっていない上層部が管理したいらしい。俺はただそれに反抗しただけ」
愚痴を漏らすだけになった説明に忘れられない記憶を巡らせたのか、母親の表情が苦渋に歪む。
「ここまで似てるとほんと、気持ち悪い…」
誰も知らない俺達“家族”の真相。
表向きに語られた“真実”と“事実”は大抵違う。
「悟さん…」
「俺は平気。全部護ってみせるよ。Aも俺も五条家も。最強なめんなよ」
不安な表情の母親に、軽く笑ってみせた。
境遇が酷似しているからといって、言いなりになるつもりも同じ道を辿るつもりもない。
「お夕飯、食べていくでしょう？」
「もちろん」
安堵の微笑みを浮かべた母親を見て、俺もやっと肩の力を抜いた。
【Aside】
「悟くん知らない？ 高専に泊まったはずなのに朝からいないんだよね」
出勤の挨拶もそこそこに、一番気になる事を伊地知くんが返す挨拶に被せ気味で問いかけた。
「五条さんなら早朝に電話がありまして、珍しく今日１日、実家に帰ると言っていました。どうしても片付けなければならない厄介なことがあると…」
「そう…なんだ…」
どうして私には何も…って…
「ああぁぁーっ！」
「ど、どどうしたんですか！？」
「浮かれすぎて忘れてた！ 嘘でしょ！？ 信じらんない！」
自分のバカさ加減に自分で幻滅して頭を抱えた。
伊地知くんの隣の席に座って力無く机に突っ伏すと、多少強めに打ち付けられた額の音で、伊地知くんがギョッとする。
「Aさん、大丈夫ですか？ 一体何が…」
「私、悟くんの連絡先、知らない。私のも教えてない」
「ええぇぇっ！？」
伊地知くんの驚きの声が、室内にこだました。
*
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2021年11月3日 22時
