38 ゴメン。巻き込むよ ページ38
不安と羞恥。困惑も混じってる。
凄く勇気を振り絞って、この質問をした事が分かる。
「幻滅って…どうして？」
「だって俺、本当はこんなんだよ。ガキっぽくて面倒臭いだろ？」
自覚、あったんだ。
そっちの方が驚きなんだけど。
「今日はどうしたの？ 随分、素直だね」
「ずっと…硝子には会わせないようにしてたんだ…伊地知を脅して…」
ん？
…あ、硝子さんに会えない伊地知くんのハードスケジュール、悟くんの差し金だったんだ。
「硝子に会ったら…あいつ、Aに俺のこと根掘り葉掘り喋ると思って…」
あぁ…確かに。
今日会った感じだと、悟くんの弱みとか滅茶苦茶教えてくれそう。
「…でも、今日は俺がしくじったから…仕方なく…」
「幻滅なんてしてないよ。むしろ嬉しいってゆうか…」
「嬉しい…？」
何で？…って不信な感情がめちゃ膨らんでる。
子供みたいに感情が丸分かり。
そこが可愛い。って言ったら怒るかな…？
考えたら頬が緩んだ。
「うん。だって私は、本当の悟くんがいい」
「…それって…殺し文句？」
「え…」
そう言って一歩一歩近づく悟くんは、今度は安堵の微笑みを浮かべていた。
スッと伸びてきた腕に引き寄せられて腰を抱かれ…
「んっ…」
もの凄く自然に。
鼻先で上を向かされ、一瞬で唇を塞がれた。
「んっ…ふぅ…んん…ッ」
深い…苦し…
これ…息継ぎ…って、いつすれば…
鼻で息…いや、鼻息は恥ずかしい…ッ
「鼻で息しなよ。死ぬよ？」
「そんなの…ムリ…」
「ははっ…可愛い」
ゆっくりと呼吸を整えて、悟くんを見上げた。
目隠しを外して見つめられ、身体が固まる。
「嫌じゃないの？」
「…っ嫌…じゃない…」
ってゆうか、今更…
「じゃあ、ゴメン。巻き込むよ」
謎の謝罪と宣言を最後に、私の思考回路は焼き切れた。
ディープキスは好きじゃない。
でも…悟くんとのソレは…
凄く気持ち良くて。
このまま溺れてしまいたいと願うほど。
「A。俺の恋人になって」
キラキラと輝く瞳を緩く細めて見つめられ…
両腕を伸ばして背伸びをし、背の高い悟くんの首に絡めた。
ほぼ、ぶら下がっている状態に等しいけれど、悟くんが私の腰を両腕で支えてくれている。
YESの代わりに、今度は私から悟くんの唇に自分の唇を重ねた。
「本当にゴメン。俺と付き合うとか超面倒――」
「――望むところだよ。悟くんと普通の恋人同士の付き合いが出来るとは思ってないから大丈夫」
肩の荷が下りたように、ほぅっと息を吐いた悟くん。
拒絶されなかったことに安心したみたいだった。
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作者名：ゆずあ | 作成日時：2021年11月3日 22時
