rainbow box！ 3rd

声を聞かせて **** ページ19

淳太




中間「 しげ、歌うの楽しい？」



なんて切り出そう。

頭の中でいろんな言葉を探っていたけど 、
気がついたらこんなストレートな言葉で舵を切っていた 。




重岡「 …… へ？」


中間「 せやから、テレビとかファンの子らの前で歌って、楽しい？」


重岡「 … 楽しいというか… 、今は必死 」


目眩は少し落ち着いたみたいで、ソファに腰掛けながら俺から目を逸らす。

はまちゃんは楽屋の少し奥の方で、雑誌を開いている。
きっと見守ってくれてるんやろうな 。






中間「 今のしげのパフォーマンスも凄いと思うし、俺にはできひん。
でもさ、毎回披露前と後でそんなにしんどそうなしげ、見てられへんよ 」


重岡「 … ごめん 、 すぐコントロールできるようにするから… 、」



中間「 ちゃうくて 。

…そんなに気張らんでも、
前みたいにしげが楽しいパフォーマンスをしたらええんやないのって 。
これまでの、気持ちに正直な 素直なステージでええと思うで。」




俺の言葉で、しげに火がついたのがわかった。









重岡「 …っ、それやよくないから、今こんなんなんちゃうんか…っ！！！」



しげの叫び声は小さく、絞り出したように痛々しい。

今まで逸らされていた目線が重なったけど、
怒りのような悲しみのような目は俺を捉えると揺れて 、

また下に落ちてしまう 。







重岡「 ……… 5年やぞ 、」


中間「 え？」


重岡「 デビューして、5年目や。先輩も形が変わった。後輩もできた。
…… なのに俺らは、…っ、 いつまでも呑気にここにおったらあかんやん！！」




それは、俺らが今まで見たことの無い、
いっぱいいっぱいになっているセンターの姿やった 。




中間「 おん。せやな。
せやけど、ファンの子らはさ、ありのままの俺らを見たいんちゃうんかな」





重岡「 そんなんわかっとるって…！！！ファンの子らの好きなような俺らや、ぜんぜん前に進めへん、ちょっと変えてみたら関係者には認められ始めたけど今度はファンがついてこれへんっ、

… … いろんな声がうるさい 、みんな言うこと好き勝手や、
どの声を聞いたらええのっ、わからへんねんっ！」





うるさいうるさい、って呟きながら、頭を抱えるようにして
耳を塞ぐ 。



興奮してしまったんか、

はぁはぁと、少し乱れ始める呼吸 。



向こうで黙って聞いていたはまちゃんが、
静かにしげを抱きしめて 、ポンポンと背中をたださすり続けた。

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