10話 side童磨 ページ10
ゆっくりと俺の手を取った彼女は、にこりと綺麗な笑みを浮かべる。
それを振り払うことなんて、さらには斬り落とすことだって容易なのにそんな気さえ起きない。
それどころか…
「そうして全部終わらせた後に私自身も消えようと思っていたのに…貴方に出逢ってしまった」
「え〜それだと出逢ったのが悪いみたいな言い方じゃあないか」
「あら失礼。これでも童磨様との出逢いは私が生きてきた中で、唯一にして最高の贈り物だと思っているんですよ?」
「あはは!よく言うよ」
こんなにも、心地が良い。
誰しも人から認められて悪い気はしないものだが、彼女の俺への想いはとてつもなく歪なのに、誰よりも純粋で真っ直ぐだった。
「…ねえAちゃん」
「はい?」
「今、俺っていつもと違う色?」
「え?いや…若干光が柔らかいですけどそれほど違うわけでは…どうされました?」
「ふーん…Aちゃんのその能力も大したことないのかもねぇ」
「んん!?童磨様なんだか辛辣ですね?」
「別に〜」
彼女とのゲームをやり遂げる義理もなければ、彼女に対する気持ちの変化を律儀に教えてやる必要だってない。
だが、これは予感だろうか?
「Aちゃん。眠れない夜は、こうして俺の所においで」
「…ふふっ嬉しい。今日の童磨様は辛辣だったりお優しかったり不思議ですね」
「そんな俺は嫌いかい?」
「ご冗談を。どんな貴女様でもお慕いしておりますよ」
冷たい彼女の手に触れながら、こんな抵抗もそう長くはもたないのではないかという気がした。
ふと、もう一度空を見上げて手を伸ばしてみる。
今夜の月は、何だかいつもより輝いて見えた。
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ルイマ - コメントはしてなかったけど一応小説作成日から見てます! (2020年8月26日 0時) (レス) id: 6a1df0e410 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - ルイマさん» (本当ですね!お名前が似ている〜!)ありがとうございます!そう言って頂けて嬉しいです(*´ω`*)頑張ります〜! (2020年8月25日 23時) (レス) id: 94aec662ed (このIDを非表示/違反報告)
ルイマ - (私のネ一ム主さんの名前に一文字たした名前、_)めっちゃ好きです!更新がんばってください (2020年8月25日 23時) (レス) id: 6a1df0e410 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルイ | 作成日時:2020年4月12日 14時