2話 ページ2
「…心外だなぁ」
面白くなさそうに口を尖らせる姿を見て、私は胸が熱くなる。
こんな表情をしながらもこれっぽっちも感情を動かさないこの男の心を手に入れたら、どうなるのだろうか?
この男は愛を知ったら、一体どうなってしまうのだろうか?
「あ、誤解しないで下さい。別に貶しているわけじゃありません」
「ふーん?」
「本当はね、貴方に恨みがあり一発ぶん殴ってやろうと思って、今宵はるばるここまで来たんですよ」
「あははそれは怖いなぁ」
「でも…うん、決めた!」
想像しただけで、震えが止まらない。
嗚呼。
人生を諦め、なるようになれとここまで来た私が最後にこんなにも生きることにしがみ付きたい理由が出来るとは。
生きていれば何が起こるか分からないものだと、思わずくすっと笑う。
そして、私はべったりと血を付けた目の前の男の手を取った。
「貴方、私とゲームをしませんか!」
「ゲーム?」
綺麗な扇子をバッと広げ、口元を隠しながら首を傾げる男。
色や容姿だけでなく、持ち物まで美しいとは…神は二物も三物も与えるとはこのことか。
「そう。貴方はどういう訳か人を食べている所を私に見られ、口封じに殺したい、これで合っています?」
「そうだね。正直、普通にお喋りしているこの状況に戸惑ってるかも」
「ふふっ確かに!まぁ、それなら戸惑いついでにこのまま聞いて下さいな?」
「いいよ。面白そうだし続けて?」
「はい!そして私は…感情のない貴方の愛が欲しい」
「…は?」
何を言っているんだという顔をされるが、私自身驚いているのだ。
これほどまでに熱い想いを抱いたことも、大胆な提案をしたこともなかった。
だがここまで来ると引くに引けない。
否、引いてたまるものか。
「期限は1年!」
男の戸惑いも気にせず、その綺麗な顔の前でビシリと人差し指を1本立てて笑う。
「もしその間に、貴方が私を一度でも愛おしいと思えば私の勝ち。大人しく私のものになって下さい!」
「思えなければ?」
「貴方の勝ち。1年後の今日、私を殺して食べればいいわ」
にこりと笑ってみせた私をじっと見つめ、彼は何かを考える素振りをする。
いいぞ。十分に思考しろ。
彼が私をこの場で殺すのは容易い。
だがこの提案を飲み、それをしないメリットもまたあるはずなのだ。
「…うん、いいよ!分かった」
「ッありがとうございます!」
こうして命を賭けた、私たちの人生最大級のゲームが始まったのだった。
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ルイマ - コメントはしてなかったけど一応小説作成日から見てます! (2020年8月26日 0時) (レス) id: 6a1df0e410 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - ルイマさん» (本当ですね!お名前が似ている〜!)ありがとうございます!そう言って頂けて嬉しいです(*´ω`*)頑張ります〜! (2020年8月25日 23時) (レス) id: 94aec662ed (このIDを非表示/違反報告)
ルイマ - (私のネ一ム主さんの名前に一文字たした名前、_)めっちゃ好きです!更新がんばってください (2020年8月25日 23時) (レス) id: 6a1df0e410 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルイ | 作成日時:2020年4月12日 14時