翼と幻想のコンツェルト【音楽家は星と歌う】 (ページ9)

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めざめノ歌・I ページ9

ハルトは気がつくと、夕陽の射し込む長い廊下に一人立っていた。

大理石でできた廊下を一瞥してみれば、あたりは漠然とものものしい雰囲気を醸し出し、彼が奥へ足を踏み入れるのを拒む。

黄昏のぼんやりとした朱色の光を奥へと流し、その光の及ばぬ先は闇であった。
まるで死者の国へでも繋がっているかのようなその風体は、不気味であるが妖艶な美しさを持っている。

「＿＿＿い....！！」

「ん？」

誰かの声が廊下に反響した。それはまるで壁を隔てたようにくぐもっており、何を言っているのかは理解できない。
ハルトはもう一度耳を澄ました。

「＿＿＿＿＿ﾙﾙｳﾝ！！」

「＿＿＿ﾄﾞｩﾙﾙﾙﾙﾙｳﾝ！！｣

「うえーい！！！やっほーい！！！」
「dkdkdkdkdkdkdkdkdk」

「...うるさ！！」

＿＿＿はっきり聞いたところで理解はできなかった。

聞こえてきた言語の訳の分からなさにハルトが目を開けると、彼の眼前に見知らぬ白い天井が広がった。
薬品の香りが鼻をつく。
そうして、彼は自らが治療室の一角で寝かされていたことに気が付いた。

朦朧とする頭を抱えたまま周囲を見渡すと、傍らにぴょんぴょんと跳ねる少女の姿があった。
どうやらその少女と自分以外に、人はいないようである。

「あ～兄者！！！起きた！！やほーい！！！」

「...誰？」
「ミューノさんだよう！！」

首を傾げるハルトに、突き立てた人差し指を顔に向けて、ミューノがぱちんとウインクしてみせた。
束の間、ハルトはテンションがおかしくなっている妹に目を丸くしたものの、一息、盛大な欠伸と共にベットにもたれかかった。