めざめノ歌・III ページ11
それからしばらく。
ミューノは、奏者達が自分たちを救ってくれたこと、そして自らも魔楽器に選ばれ、自分が奏者になったことをぽつぽつと話した。
「...左足は、大丈夫なの?」
ハルトがふと口を開いた。
妹の足が切断された光景は、ハルトの脳裏に赤黒く焼き付いていた。
「うん。なんと!トカゲの尻尾みたいに生えてきちゃった!
兄者の右腕も、ちゃんと生え変わってるよ。」
ミューノがハルトの右腕を指す。
言われてみれば、とハルトが無くした筈の右腕を見ると、確かにそこには新しい腕があった。
病衣の右袖をたくし上げ、手のひらを開け閉めしたり、上下に揺れ動かしてみる。
彼はいつも厚着をしているおかげで随分と白皙であったが、新しく生えたと思われるその右腕は、より一層色白であるように思えた。
生え変わるとは新事実である。
こんなことならあんなにビクビクせずに早計に逃げればよかったと、ハルトは内心溜息をついた。
「はぁ〜...ジンルイってすごいね」
「さすが不死身!!」
ミューノが親指を立ててウインクし、キラッと星を飛ばした。
一番の心配事が万事解決し、ハルトが深い溜息をつく。
ハルトは気の緩みと共に治療室の薬品の香りに鼻腔をくすぐられ、鼻の奥がつんとするような感覚を覚えた。
「ミューノ、よく頑張ったね。まだ6歳なのに」
そう言って、妹の頭に手を伸ばす。
いつも通りに頭を撫でてあげようとしたが、その手は空を切った。
ミューノの背はいくらばかしか高くなっていた。
「あれ、ミューノ、地面からちょっと浮いてる?ドラ○もん?」
「なんでそういう発想に至るの!普通の背が伸びただけだよう!」
「じゃあ太った?」
「デリカシーのカケラもあったもんじゃないよ!」
ミューノがハルトのほっぺをみょんみょんと引っ張った。
ハルトは無抵抗でみょんみょんされる。
「兄者、半年も眠ってたんだよ。」
一息ついた後、ミューノがポロリと言葉を漏らした。
「へ?」
_____唐突に向けられたその言葉に、ハルトがアホ毛をハテナの形にして目をぱちくりとさせた。
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作者名:冬目 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/orazu/
作成日時:2017年10月17日 1時