【完結】宮野さん（女）はえいとです。 (ページ4)

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③昨日は遠すぎる【橙】ページ4

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橙Side

「あ！丸ちゃん！！」

つい昨日も会ってたのに、まるで100年ぶりみたいに
君は廊下の向こうから走ってきた。

長いテレビ局の廊下。

手をぶんぶん振りながら、やっとここまで辿り着くと切れた息を整えている。

「昨日も一緒だったやん」

「昨日なんて遠すぎるわ。今日は今日やで。
それに、会えると思ってなかったから。」

「せやな」

嬉しそうにしているのを見ると、期待してもええのかな。

なんて思ったりするけど、それはいつも隠しておいている。

「あ、丸ちゃん、あんな………相談があんねやけど」

急に真剣な顔をして、乱れた短い前髪を直し始める。

「ん？どうかしたん？」

「信ちゃん近くにおらへんよね」

「うん、居いへんと思うけど…」

「……私、出んねん。夜ふかし。」

「あ～、内緒なんやな？」

「せやねん。私、メンバーやっとるんに出んの初めてやし、何よりマツコさん大好きやから、緊張もしてるし」

芸能界に頭まで浸かってるはずやのに、いつまでもこういう新鮮な気持ちで生きてるんやなあ、と改めて思ったりする。

「待ってる時めっさ緊張、やで」

「うわ〜怖いわ。内緒にするんも辛いし、」

「え、なんか番宣あったっけ？今、大河やろ？」

するとにやっと口角が上がった。

「番宣、特にないねん。
出たーいって、上の人にお願いしたら叶ってんな。」

やっぱり君は愛される才能がある。
それを使うのも巧い。

僕には持ち得ない特技で、嫉妬すら覚えそうや。

「じゃあ、また。あ、絶対信ちゃんには内緒やからね」

もう少し、待ってみることにする。

え？何をか、ですか？
……色々や。色々。

僕は待ってるんです。

独りぼっちの駆け引きと呼ぶべきか、
返事のない留守番電話への語り掛けと言うべきか。

分かれへんけど、期待くらいしてもええやろ。

まあそんな心持の日々です。

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