32.公私混同 ページ32
一度意識してしまうと、その透き通るような白い肌に触れることに躊躇する。
メイクの仕事とは別の次元で、この顔に触れたいという感情が芽生えたからだ。
『違う、私は仕事で触らざるを得ないんだ。』と自分に言い聞かせる必要があったのは初めてだった。
私のメイクの順番を覚えてくれていて、次の動作に合わせてやりやすい様に目をつぶってくれる彼の小さな優しさに感謝する。
この邪な想いを、勘の良さそうな鋭い視線に全て見透かされそうになるから、目を閉じてくれて余計に感謝した。
この仕事を続ける以上、この感情は邪魔でしかない。
ましてや会社の大黒柱に、決して持ち合わせてはならない。
( 私はユンギさんにからかわれて、親しくなったのが分かって嬉しかっただけ…… )
それがユンギさんなりの、いちスタッフへの思いやりだっただけ。
私はそれを勘違いして、良いように捉えてしまっただけ。
傷つくことなんてない。
振り回されてなんかない。
大丈夫。
今まで通りにやれる。
『目を開けて上を向いて下さい。』
アイシャドウを塗り終えて、下目尻に影をさす。
言われた通りに開いた目が、一瞬だけ私を捉えた。
その一瞬で心まで捉えられたのかと思うほど、心臓までハネると同時に息が詰まりそうになって……
少しだけ騒がしくなった部屋の外にも、今目の前にいるユンギさんにも、そんな事など絶対に知られてはならない事だった。
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33.混ぜるな危険 YG side→←31.曲者揃い JK side
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作者名：kee x他1人 | 作成日時：2018年9月16日 23時
