主治医の助言 ページ48
「はい、できたわよ」
エルティアナの髪を編み込みのカチューシャにすると彼女は恥ずかしそうに俯いた
「ありがとう、セシル。その…色々ごめんなさい」
「謝るくらいなら溜め込まないようになさい。自分が辛いだけよ」
「…うん」
永い時を生きている…というか、その記憶を保持しているこの女神は私にとって幼い妹のような存在だ。だから、目が離せない。目を離すと、彼女は独りで全てを抱え込んでしまうから
「ねぇ、セシル。この服、どこにあったの？」
自分が着ている白のブラウスと深い緑のミモレ丈フレアスカートを見下ろして軽く首を傾げるエルティアナ。どうやら彼女は永い時を生き過ぎて忘れてしまったらしい
「〈アレグリア商会〉を設立した時に資金援助のお礼って言ってアレンとアリーにもらったじゃない。あなたの部屋のクローゼットに入っていたわよ」
「あー…そういえばそうだったわね」
潤沢な資産を有するエルティアナはブリタニア中に宮殿のような屋敷を持ち、その内のいくつかを王族や貴族に貸し出している。リオネス王家もその一つで、もしかしたらエルティアナがリオネス王家の養女になるのは運命だったのかもしれない
ふぅ、と小さく息を吐いた私はリオネスの最新情報を教える
「エリザベス姫が倒れた」
「え……」
エルティアナにとってエリザベス姫は、憎しみはあれど可愛い妹のような存在。そんな姫の容態を聞いたエルティアナは大きく目を見開いた
「早く…行かなきゃ」
「そんなに慌てなくてもそこまで酷い状態ではないわ。多分、これまでの疲労や心労に加えて無意識下で発動させた魔力の負荷で体が悲鳴を上げたのね」
「…記憶、は……っ」
「魔力だけだからそんなに怯えなくても大丈夫よ」
「…そう」
ホッと胸を撫で下ろすエルティアナに小さく笑みを溢した私は、刻みタバコを詰めた煙管に火をつけて流し目でエルティアナを見た
「行きなさい。心配なのでしょう？」
「…うん。ありがとう、セシル」
少し微笑ったエルティアナは小さく手を振ってリオネスへ転移した
「…何もなければいいけれど……」
ふぅ、と煙を吐きながらメリオダスとエリザベス姫を思い浮かべた私は、せめてルティが平穏無事に過ごせますように、と柄にもないことを願った
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
pomme(りんご)(プロフ) - 瑠李さん» 返信ありがとうございます。また何かありましたらお教え頂けますと幸いです (2021年7月4日 20時) (
レス) id: cf9e4ba859 (このIDを非表示/違反報告)
瑠李(プロフ) - ありがとうございます！今読みました。これからも面白い小説頑張ってください！応援してます！ (2021年7月4日 19時) (レス) id: 88c711d3e6 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(りんご)(プロフ) - 瑠李さん» コメントありがとうございます。今、消しましたのでご覧頂けると幸いです (2021年7月4日 19時) (レス) id: cf9e4ba859 (このIDを非表示/違反報告)
瑠李(プロフ) - 国王陛下の帰還が同じセリフがあります (2021年7月4日 19時) (レス) id: 88c711d3e6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アストライアー | 作成日時：2021年7月3日 22時
