検索窓
今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:23,275 hit

目を逸らしていたこと ページ40

「メリオダス、様……?」

 突然抱きしめられ、反射的に体を強張らせる私の背をそっと撫でるメリオダス様

「…ごめん。本当に…ごめんな。オレのせいだろ?オレのせいで、本当の気持ちを吐き出せなくなったんだろ?」

「……」

 違う。あなたのせいじゃない。そう思っているのに言葉を返せなかった

 ずっと見ないフリ、知らないフリをしていた。自分が抱く、愛する彼(メリオダス)に対する気持ちから目を逸らしていた。でも、もう知らないフリなんてできない

 どうして、私を選んでくれなかったの?どうして、私じゃなくてエリザベス(あの子)なの?どうして、私を信じてくれないの?どうして、私の死を望むの?どうして、私を見捨てるの……?

 狂ってしまうほど誰かを想うのが"恋"だと言うのなら、私は要らないと思っていた。けれど、メリオダスに出逢ってそんな決意はどこかに吹っ飛んだ。自分が持ち得る全てを投げ捨ててでも、彼と共に在りたいと思った。彼の隣で、未来を見たいと願った。でも、彼が望んだのは私ではなかった。だから、彼が魔界を出るつもりだと知った時、彼が出やすいように細工をした。告げもせずに淡く散った初恋。"婚約者だから大丈夫,,と驕っていた私の目を覚ましてくれた、メリオダスの裏切り。最後の別れの時も何も知らないふりをして彼を送り出した。それがメリオダスにとっての最善だと信じて

 けれど、ずっと心の底ではエリザベスの手を取ったメリオダスを恨んでいた。何度も何度も裏切られて"私,,のことなんて眼中にもない癖に優しくしてくれる彼が恨めしくて、腹立たしくて、哀しくて、辛くて、苦しくて_____でも、どうしたって嫌いにはなれなかった。メリオダスという人が大切で愛おしくて…ただひたすらに彼を求めている。それに気が付いた時、浅ましく愚かしい己に吐き気すら催した。何もかもを奪ってほしかった。私という存在を、世界のどこからも、消してほしかった

「……っ」

 ずっと意識して整えていた呼吸が乱れる。手足が痺れてズキズキと左胸の辺りが痛む

「ユーリ……?」

 異変に気付いたメリオダス様が顔を上げて私を見つめる。翠の瞳に宿るのは、心配と不安

「っ……」

 ふっ、と目の前が暗くなり、意識がどこかへ遠のく感覚と共に膝から崩れ落ちる

「ユーリ!?/エルティアナ様!?」

 意識が途切れる寸前に見えたのは、珍しく焦ったような表情(かお)をしているメリオダス様だった

知らないはずなのに、知っている→←重ねて見ていた理由



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.2/10 (13 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
38人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

pomme(りんご)(プロフ) - 瑠李さん» 返信ありがとうございます。また何かありましたらお教え頂けますと幸いです (2021年7月4日 20時) (レス) id: cf9e4ba859 (このIDを非表示/違反報告)
瑠李(プロフ) - ありがとうございます!今読みました。これからも面白い小説頑張ってください!応援してます! (2021年7月4日 19時) (レス) id: 88c711d3e6 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(りんご)(プロフ) - 瑠李さん» コメントありがとうございます。今、消しましたのでご覧頂けると幸いです (2021年7月4日 19時) (レス) id: cf9e4ba859 (このIDを非表示/違反報告)
瑠李(プロフ) - 国王陛下の帰還が同じセリフがあります (2021年7月4日 19時) (レス) id: 88c711d3e6 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:アストライアー | 作成日時:2021年7月3日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。