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女神の葛藤と決意 ページ25

「分かってる……っ」

 本当は、シリルを元に戻せたとしても彼を生かす方法なんてないことくらい理解していた。これでも生命を…魂を司る女神である。シリルが生きていられる理由も、方法も、分かっている。だから、シリルが元に戻ればどうなるかも…全て、理解している

「義姉上…言って…くれました…よね?僕が…魔神の力に…呑まれたら…止めて、くれるって……」

 僅かに残った自我さえも崩壊しつつある今、シリルは精一杯の力で私に訴えてくる

"シリル、魔神の力が怖い?,,

"…僕は、兄上やゼルのように優秀じゃありません。だから…魔神の力に呑まれていつか誰かを傷つけてしまうかもしれない……。それが…怖いんです,,

"そっかぁ。…じゃあ、その時は私が止めるよ。シリルの魔神の力に呑まれて誰かを傷つけてしまう、その前に,,

"……その時は、お願いします,,

「今の僕は…正常じゃ…ない……。でも…もう…自分では…止められない……。だから…義姉上……っ」

 あの時の約束は嘘じゃない。力に呑まれてしまって誰かを傷つけてしまうのは、シリルの願いではないと分かっていたから

 覚悟を決めた私は、深呼吸をして閉じていた目を開けた

「…分かった。あの時の約束を、果たす」

「うん……っ」

 涙を零して嬉しそうに笑ったシリルは次の瞬間、魔力を暴走させた

「ルイスさん、結界の中に居て」

「え?」

「シリルの魔力は、魔に由来するもの。人間のあなたが触れたら体調を崩してしまう恐れがあるの。結界の中に居れば安全だから…そこにいてね」

「……はい」

 力強く頷いたルイスさんに結界を張った私は持っていた神剣を元の場所に戻し、震える手で神器を弓に変えた

「義姉上は…僕のもの。兄上なんかに…裏切り者なんかに…渡すものか」

「…ごめんね、シリル」

 弦を引っ張ると光の矢が出現し、魔力の蓄積(チャージ)と共に蒼銀に輝く

「"光よ、魔を貫き、闇を浄化せよ(リュミエール・プュリフィカシオン),,!!」

 指を放すと矢が闇の魔力を裂き、その中心にいるシリルの胸を貫いた

「っ……」

 魔力の暴走が止まると同時に操られていた糸を失ったシリルが力なく地面に倒れた

魔王子の最期の願い→←壊れゆく魔王子の願い



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pomme(りんご)(プロフ) - 瑠李さん» 返信ありがとうございます。また何かありましたらお教え頂けますと幸いです (2021年7月4日 20時) (レス) id: cf9e4ba859 (このIDを非表示/違反報告)
瑠李(プロフ) - ありがとうございます!今読みました。これからも面白い小説頑張ってください!応援してます! (2021年7月4日 19時) (レス) id: 88c711d3e6 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(りんご)(プロフ) - 瑠李さん» コメントありがとうございます。今、消しましたのでご覧頂けると幸いです (2021年7月4日 19時) (レス) id: cf9e4ba859 (このIDを非表示/違反報告)
瑠李(プロフ) - 国王陛下の帰還が同じセリフがあります (2021年7月4日 19時) (レス) id: 88c711d3e6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アストライアー | 作成日時:2021年7月3日 22時

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