記憶の扉 ページ7
彼の手に触れた瞬間、頭の中にたくさんの映像が流れた
たった一瞬のことで、何が見えたのかはわからない
ただ、急にたくさんの情報が入ってきて、めまいのようなものを起こしてしまった
幸い、彼が支えてくれたおかげで怪我をすることはなかったけど…
バイクで来ていた彼が、送ってれることになったのはいいけど…
どうしたらいいかわからず、立ちすくんでいると、彼は少し笑っていた
彼は私に近付くと、軽々と抱き上げた
A
「…ぇっ…？」
あっという間に、私の目線は彼より高いところにあった
千冬
「A、相変わらず軽いな」
『A、軽いなぁ』
前にも同じようなことがあった気がする…
すとん、とバイクの後ろに下ろされた
千冬
「ちゃんと捕まってろよ？」
A
「…あの、松野さんっ…」
千冬
「千冬…
名字だと呼ばれ慣れねぇから」
A
「…千冬…」
千冬
「やっぱ、その方がしっくりくる」
ニッと笑う千冬
ドクン、と心臓が大きく鳴った
落ちないように、彼に遠慮しながら掴まる
走り始めるとその疾走感に少し怖くなって、思わず彼にしがみついた
すると、なんだかとても安心する
この温もりを、なぜか懐かしいと感じていた
マンション前まで送ってもらった別れ際
急に寂しさを覚えた
もうすこし一緒にいたかった、と…
私、一虎がいるのに何を考えているのか…
…なんだか、すっきりしない…
そぅだ…
あの日、病院のベッドで目を覚ました時…
その場にいたのは、母だけだった
頭がぼぉっとしていて、なぜ自分が病院にいるかもわからなかった
ただ、母から聞いたのは、私が倒れた時に一虎が近くにいたこと
一虎が自分の部屋まで私を運んでくれて看病してくれたこと
明らかな体調の変化に一虎が気付いて、母を呼んだこと
母から聞かされたのは…
一虎くんが彼氏で近くにいてくれてよかった、と…
それを聞いた時、最初はしっくりこなかった
でも、一虎がお見舞いに来てくれた時、すごく心配された
無事でよかった、と言ってくれた
だから、私は高熱が続いたから、夢とか現実とか、ぐちゃぐちゃになってるだけだ、と…
でも…
どうしても、頭の中のモヤが晴れることはなかった
何かが違う、と…
私はやっぱり何か、大切なことを忘れている気がする…
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神奈月(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます。お話は佳境ですが、みなさんに楽しんでもらえるようにがんばります。 (2022年11月27日 7時) (
レス) id: d80d51a44f (このIDを非表示/違反報告)
あい - いつも更新を楽しみにしています。千冬と一虎、これからヒロインとどんな結末が待ってるのかとても楽しみです (2022年11月26日 16時) (レス) @page39 id: c280eab537 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：神奈月 | 作成日時：2022年11月1日 13時
