話したい14【桃】

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その時だった。
グイッと腕が引かれる。
突然のことで後ろに倒れてしまうが、支えてくれたおかげで倒れず済む。
顔を上げれば隼さんがいた。
支えてくれたのだろうが、抱きしめられたみたいな格好で何だか恥ずかしい。
というより、腕を引いたのは隼さんなのだろう。
引かれた腕はまだがっちりと掴まれていた。

理解が追いつかないまま、再び今度は反対側にグイッと腕を引かれる。


る「そっちこそ何なんですか？」


今度はるぅとくんだった。
るぅとくんは睨むような目つきで隼さんをみていた。
怒ったるぅとくん。
怒らないで、って手を伸ばしたかったけれど、るぅとくんが怖くて、隼さんをみても怖い。
ばちばち火花でも散ってるような二人の間。

怖い空間嫌だ、って隼さんとるぅとくんの腕を振り解いて莉犬くんに逃げる。


り「はいはい、怖かったね〜。るぅちゃん、Aちゃんめちゃめちゃ怖がってるから。」


莉犬くんの声でハッとしたようにるぅとくんから怒りのオーラが消えた気がした。
怒らないで、ってるぅとくんの袖を握る。


隼「え？」


握った瞬間声を出したのは隼さんの方だった。


隼「Aちゃん、知り合い！？」

る「え？そちらもお知り合い？」


そうだよ、って。
るぅとくん、怒らないで、って莉犬くんから離れてるぅとくんにぎゅって抱きつく。


る「…ごめんなさい。」


私がムッて口を尖らせたらシュンとしたように謝るるぅとくん。


隼「こちらこそ…！すみません！！…その、ナンパかと…。」

り「あー、まぁAちゃん可愛いからね〜。」


あははー、と気の抜けたように笑ってる莉犬くん。


「あれー？何してんの…って誰？イケメンじゃん。」

隼「…Aちゃんの知り合いらしい。」


何だか少し低い声。
なんで隼さんまだ少し怒ってるんだろう？


「知り合い？抱き合ってんのに？…彼氏？」

る「ぼ、僕は違います！！」


パッと私から離れるるぅとくん。


隼「僕…は？」

「じゃあ君？」

り「俺も違うよ。Aちゃんに関してはこの距離が違和感ないもんねー。」


離されて寂しいって思ってたら莉犬くんがギュッてしてくれる。


り「Aちゃんのこと、よろしくお願いします。恥ずかしがり屋さんで甘えん坊な子ですけど。」


莉犬くんころちゃんみたい。
私より年下のくせに、って頬を膨らませたら可笑しそうに笑いながらぷしゅうって潰された。

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