5話 ページ6
『寝不足だ…』
眠い眩しい…と呟きながら段ボールをバスに詰め込むその顔は、数分前にホールへ戻って行く帝襟さんに向けた笑顔と同一人物とは思えないほど、気怠げな表情をしていた。
今日は指定強化選手が集まる日。予定では300人来るそうなのだが、本当に来るのだろうかと懸念していた朝。
連合までの道のりでどう300人に連絡したのか聞いてみたところ、家に封筒を送りつけただけなのだそうで。それだと悪戯だと思う人もいるんじゃないか、と思っていたが、それは杞憂に終わった。
先程ラスト2人が会場に入っていくのを確認したので、そろそろ絵心さんのプレゼンテーションが始まる頃だろう。
1つも欠席の欄に丸がない表を見て眉をひそめたのは、人生でこれっきりだと思う。『最近の若者、大丈夫か?』なんて、ババくさいことまで言ってしまった。
私だったらいくら将来の夢とはいえ、急に白い封筒が家に届いてもアポイントメントセールスか何かだろうと決めつけて捨てる自信しかない。
『(あれ、おかしいの私の方か…?)』
あくびを噛み殺しながら全ての段ボールを詰め終える。裏口前に戻ると何やら慌ただしい足音が聞こえてきて、だんだんそれが多く、大きくなってきた。
『(これ、もしかしなくても
こっちに向かってる…よね…)』
嫌な予感を察知して小走りでバスの前まで離れると、バアンッ…と勢いよく扉が開いて人が洪水のように溢れ出てくる。
裏口前は、あっという間に人で埋まってしまった。
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作者名:雨が好きな人 | 作成日時:2023年1月11日 18時