2 歩く ページ2
『お前、どこの子？』
連れられて歩きながら、仔牛に訊く。気づけば辺りは針葉樹の森から白樺の点在する森に変わっていた。心なしか、寒さも少し和らいだ気がする。凸凹とした土地を歩く度にずり落ちるニーハイは、もう膝上に引き上げるのが面倒になってきたので直す事を諦めた。
〔えっとね、あっち〕
いきなり森が拓けた所で仔牛が鼻の先で指した方向には、乾いた平原が広がっているだけだった。
『え…本当に？』
〔うん。お兄ちゃんたちが、まってるはず〕
『…そっか』
兄弟がいたのか、羨ましい限りだな。ぽつんぽつんと侘しく生えている低木を眺めながら、仔牛と共にゆっくりと歩く。
『サバンナみたいだな』
〔さばんな？お兄ちゃんたちからきいたことある〕
『へぇ。牛って博識なのな』
…いや、私ってば何自然に会話しちゃってんの？まるで弟かのように話してるけどおかしいよね？？とか思っていたが、ふと後ろから視線を感じた気がして振り返る。
『…？誰もいない…』
気のせいか？怪訝に思いながら立ち止まると、仔牛は急かすように鼻先で私の背を推す。
〔はやくしないと、夜になっちゃう〕
『え？あぁ』
空を見れば、確かにもう日が沈みかけていた。歩き出した時にはまだ高い位置にあったはずなのに、時が経つのは早いものだ。ただ歩くだけでも、マンネリとした高校生活を送るよりかは、幾分マシな時間の過ごし方だろう。
『…暗いな』
秋の日は釣瓶落としとは良く言ったものだが、本当に秋かと思うくらいにストンと落日した。日没後の空気は徐々にひんやりと澄んでいき、静かな空間が訪れる。……と、思っていたのだが。
〔ニンゲン、いル。ニンゲン発見シた〕
『はい！？』
ダミ声のような、低く割れた音が暗がりから聞こえ、思わず仔牛と一緒に飛び退る。鼻孔を突く、腐敗した肉の臭い。声の主を見れば、人形の目が虚ろな化け物が立っていた。
『うげぇ、何これキモ…』
前方からは骨の軋むような音も聞こえてくる。ホラーマンはアンパンマンの絵本に出てくる奴だけで十分だ、実際に会いたくはない…とにかく逃げなくては。本能的に危険を覚った私は、仔牛の背中をそっと叩いて声をかける。
『動ける？』
〔こわい。こわいよぅ、お兄ちゃーん！！〕
『ばっか、大声出したら…』
注意するも、時既に遅し。ターゲットをこちらに向けた化け物から仔牛を守ろうと抱きしめてぎゅっと目を瞑った時、何かが横から躍り出て来た。…緑色のパーカー。誰だ、この人。
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ねこ娘(プロフ) - 初めまして！本当にマイクラの世界で生活してるみたいでドキドキしちゃいました！マイクラの世界って何も知らずに入り込んでしまったらこんな感じなんだろうな、、すごい新鮮で読んでて楽しかったです！tnのお兄ちゃん感もめっちゃ好きでした笑完結お疲れ様でした！ (2021年2月2日 20時) (
レス) id: 5a39984025 (このIDを非表示/違反報告)
いちごみるく(プロフ) - 完結おめでとうございます！とても好きなお話だったので、完結が少し寂しく思ったりもします…次のお話、楽しみにしてます！ (2021年2月2日 9時) (レス) id: 1755ed01f2 (このIDを非表示/違反報告)
都築(プロフ) - 失礼します。完結おめでとうございます!!とても面白かったです!!新作楽しみにしてます。 (2021年1月31日 23時) (レス) id: e5f03274fe (このIDを非表示/違反報告)
ゆうり(プロフ) - Aliceさん» 解りづらい表現だった事をお詫びします。本文に説明を付け足させていただきます…！ (2021年1月31日 15時) (レス) id: 5789c02b18 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうり(プロフ) - Aliceさん» ご指摘ありがとうございます！私の記憶が正しければ、倫理用語として使う時には「りんねてんしょう」と読むのが正しかったかと思います。どちらの読みも有り得る言葉ですが、宗教的な話がしたかったのであえて「てんしょう」をチョイスさせていただきました。 (2021年1月31日 15時) (レス) id: 5789c02b18 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年1月19日 18時
