88松 ページ37
「……なにその顔。俺の話聞いてた?」
「……………っ……ふ……」
ちょっとだけポカーンとしてたと思ったら俯いて肩を震わせ始めたA。
口を手で押さえてはいるけど、微かに見えた口角は上がっていて明らかに笑いを堪えているのがわかった。なんでや。
「ちょっとなんで笑ってんの。今そんな空気じゃないだろうがおい」
「………だ…だって一松さん…、必死過ぎ……顔真っ赤だし…」
「ああ!?おまっ、このシリアス展開でそれ!?こっちは真面目だってのに!」
「…ぷっ…、やっぱり一松さんってたまに可愛い…」
「てんめっ」
軽く裸絞めしてやった。慣れないシリアス空気の中頑張ってた俺の苦労を返せ。
Aはすみませんって言いながら俺の腕をペシペシしてるけど、まだ笑っている辺り余裕そうではある。こいつもう少し絞めたろか。
なんかポケットの中のスマホから黒いオーラみたいなのが漏れてきてる気がするけど気にしない。
「ふふ…ギブですごめんなさい。話しますから一回腕を解いて下さい」
「……次に笑ったら卍固めな」
「卍?」
腕を解いてAに向き直った。
Aはまだ笑みを浮かべてはいるけど、観念したように俺の目を真っ直ぐ見ている。
笑顔故に目尻の腫れが余計に痛々しく見えた。
……まだ虚勢を張っているのだろうか?
玄関じゃあ話すのも何だからという事で俺達は居間に移動し、卓袱台の側で二人向き合う形で正座した。
「えっと…、どこから話しましょうか?」
「………今の事態に陥ってるのは、俺が昨日会ったおっさんが原因?」
「……そうですね、まずはそこから話しましょうか。一松さんは山中さんが私に言ってた事、覚えてますか?」
「…、“お父ちゃんに会ったんか”?」
「はい。もう大体察しているかもしれますんけど、一松さんが昨日墓参りの時に会ったのは、私の父です」
私も遠目からではありますけど見えたので…、と目を伏せるA。予想通りの事実だった為そこまで驚きはしない。やっぱりなって感じ。問題はその先だ。
「一昨日話した私の家族構成については覚えてますか?」
「うん、お母さんが亡くなって、その後は爺さん婆さんに引き取られたんだよね」
「はい。でも私その話、実は端折ってたんです」
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渚(プロフ) - 月花さん» 返信が遅れてしまいすみません。1でもコメントしたのですが、Azpainter2というPCソフトを使っています (2020年2月3日 20時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
月花 - 絵上手いですね。どうやってらんですか? (2020年2月3日 19時) (レス) id: a919e6fca7 (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» ご要望にお応え出来ず申し訳ございません…。今後ともよろしくお願いいたします。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: d823623ddd (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - すいません;最新頑張って下さいね。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: e772f145ae (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» えっと、それは短編小説のリクエストでしょうか?それですと申し訳ないのですが、小説のリクエストは受け付けておりませんので…。 (2018年9月4日 18時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渚 | 作成日時:2018年1月14日 17時