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「えっ、どうしよう……」

どんどんと人が離れていって、不安そうにチヅルちゃんが呟いた。

「えーっと、とりあえず、仕方ないからおれたちはおれたちで、四人で探索しよっか……」

みらくんが同意を求めるようにわたしたちを見回す。すると、かえでちゃんは彼と目が合った途端、視線を伏せてしまったの。そして、ぎゅっとうさぎのぬいぐるみを抱きしめて、控えめな声色で言った。

「……っ、い、いい。かえでは、大丈夫。ゆんなちゃん、行こう……?」

きゅっとわたしの左手首をつかまえて、かえでちゃんはわたしの顔を見つめた。

「えーーーっ!?なんでなんで!?バラバラになったら危険じゃん!!」

みらくんは驚いたように大声で言った。かえでちゃんはその声にビクッと肩を揺らしてから、またわたしに、今度は縋るように視線を向けた。

「お願い、ゆんなちゃん。ここにはいたくないの……」

どうしたの、かえでちゃん。
そう聞きたかったけど、今はかえでちゃんのことがとにかく心配だ。

「うっ、うん。いいよ、行こっか!」
「えーーっ!?ちょ、なんで!?おれちゃん、なんかしたあーーーっ!?」

みらくんの叫びも虚しく、わたしたちは来た方向へと駆け出した。逆戻りになっちゃうけど、そんなこと考えてる余裕なんてなかった。わたし、かえでちゃんの目に弱いなあ……。



やがてエントラ ン ス ホ ールに戻ってくると、わたし達はキョロキョロと辺りを見回した。
そして迷った末に階段を降りて、壁際の扉の一つに手を掛けたの。

開くと、そこは外だった。正しくは、どこかの道路の風景、かな。車は一台も通ってない。″ほこうしゃ″側の道にはレンガ造りの花壇があって、色とりどりの紫陽花が花びらに乗った雨 露を光らせてる。

「わあ、きれい……!ゆんなちゃん、近くに行って見てみましょう……!」
「わっ、う、うん!」

かえでちゃんに手を引かれて、わたし達は扉の先へと踊り出た。

背後でギイッと軋む音がして、扉が閉まったのがわかった。振り返ると、道の真ん中に木の扉がぽつんと立っていて、なんだかおかしかった。

「ゆんなちゃん、見て!紫陽花、とっても綺麗……!」

かえでちゃんはまた、とても嬉しそうに笑ってる。さっきはどうしたの?なんて、今の彼女を見たらとても聞く気にはなれなかった。

「かえでちゃん、お花好き?」
「大好きよ!」
「ほんとに!?わたしもね、お花が好きなの!」
「ゆんなちゃんも?えへへ、おんなじね」

わたし達は思わぬ共通点に声を弾ませて、くすくす笑い合った。

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作者名:褪紅 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年5月17日 7時

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