いーち ページ3
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私の手に握られているのは期末テストの回答用紙。
もう梅雨に差し掛かった憂鬱な季節。
じめじめしていたからか、回答用紙がしっとり保湿されている。
隣に座っている男子はすげー、と口を開けているが私にとっては普通なので、何が凄いの?と聞き返す。
「え、点数高いじゃん!!」
「そう?私にとっては普通だから...」
先程と同じ言葉を返す。今度は笑顔も添えて。
すると、男の子は真っ赤な顔でそっか、と言ってそっぽを向いた。
(ウブなのねぇ...)
上記を見て私の事を【ビッチ】だの【タラシ】だの言われそうだな、と思い心の奥に閉まっておいた。アイツにバレれば終わりだ。
私がテストで高得点をとりたい理由は二つ。
まあ、ひとつは普通に大学に行くため。
ふたつめは...
「日野ーテストどやったぁ?」
なんてニタニタしながらこちらに歩いてくる巨人チャラ男金髪野郎。
こいつに勝つためだ。
おっと、女たらしをつけ忘れた。
「センラさんは?どうなの?」
物を聞くときは自分から言わないと。
不躾なチャラ男だ。
「えー、じゃあ、いっせーのーせっで出そ。」
「わかった。」
「「いっせーのーせっ!」」
ペラリ、裏返された回答用紙。
私の方には98で、verygoodという単語が添えられていた。
一方、チャラ男 基 折原センラは100、perfectの綴りが。
やってしまった...
アイツに負けてしまった...
「ふふーん、日野負けてしもうたなー?」
「だからなに。まだ英語しか帰ってきてないじゃない。」
これまたニタニタ、ニヤニヤ笑って見下しているソイツは私がそっぽを向けば
「もーう拗ねんなってー」
と言いながら頬をむぎゅっとホールドして無理やり顔を合わせさせられる。
(ちかい...)
私は断じてこいつの事は好きではない。
しかし、私以外の学校の女生徒を落としたその美貌を至近距離で見るほど耐性が備わってない。ただいま頭がショートしている。
「ふふ、顔真っ赤やでーあ、俺に惚れたん?」
「んな訳ないでしょ。自惚れないで。」
少し格好よさげになっていたシーンをぶち壊す発現。さすが非常識人。
真顔で返してやるとクスクス笑ってからそやよねーと言いながら私の耳をキュッと摘まんで席に戻ってしまった。当然私はなにがなんだかわからない。口を開けて突っ立っている。
(なんだアイツ...キモい)
どうやら落とすのは難しそうだ。
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埃(プロフ) - ぺるはむさん» あっあっありがとうございます!楽しんでもらえる小説目指して更新頑張ります!どうぞお楽しみください! (2019年6月27日 17時) (レス) id: 56e235f694 (このIDを非表示/違反報告)
ぺるはむ - こういうケンカ系の男女の恋愛めっちゃ好きです!これからも読ませていただきます! (2019年6月27日 17時) (レス) id: 134342f6dc (このIDを非表示/違反報告)
埃(プロフ) - もでらーと。さん» わ!わ!ありがとうございます!もでらーと。さんの小説すごく好きなので、今後の励みになります! (2019年6月26日 18時) (レス) id: 56e235f694 (このIDを非表示/違反報告)
もでらーと。(プロフ) - すごく面白いです…!坂田家なんですが、読んでる間センラーになってましたw 更新頑張って下さい!! (2019年6月26日 18時) (レス) id: 5d5b1bd419 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2019年6月25日 19時