178話 ページ28
鼻の奥がツンとして目頭が熱くなって、ハリーは天井を見つめた。
ロンとハーマイオニーが目を逸らしてくれればいいのに、と思った。
それでもハリーは目尻を伝っていく温かいものを、拭う気になれなかった。
「あなたのせいじゃないわ、ハリー」
「僕と一緒に優勝杯を取ろうって……僕が言ったんだ」
あんなこと言わなければよかった。僕がさっさと優勝杯を取れば、僕だけがあそこに行ったのに。
──そうしたら、セドリックは今も生きていたのに。
今更何と思おうと、もうセドリックは帰ってこない。
ハリーはゴブレットを取り薬を一気に飲み干すと、すぐに睡魔に襲われた。
涙も拭わずに、枕に倒れ込み、もうそれ以上何も考えなかった。
✳︎
一か月経ってから振り返ってみても、あのことはハリーには切れ切れにしか思い出せなかった。
全て受け入れるのは無理だと言うように、記憶が断片的に残ったのだ。
医務室でそのことを考えながら隣のベッドで目を覚ましたAを見て、忘れてしまいたい記憶を一生忘れられない彼女の苦しみが、痛いほど分かったように感じた。
あれからハリーにとって一番辛かったことは、多分、次の朝にディゴリー夫妻と会ったことだろう。
二人共、あの出来事に対してハリーを責めなかった。それどころか、セドリックの遺体を二人の元に帰してくれたことを感謝した。
しかし優勝賞金の金貨はセドリックのものだから受け取ってくれと頼んでも、夫妻は受け取ってくれなかった。
セドリックが迷路から出た時一つの傷もなかったことを夫妻がハリーに感謝したので、それは僕じゃなく女の子が魔法をかけてくれたんだと説明すると、会わせてくれと申し出た。
ディゴリー夫妻に会うため医務室に戻ってきたAはその時もう既に泣きそうだったのに、ディゴリー夫妻にお礼を言われると、もっと大声で泣き出してしまった。
慌てて背中をさすりながら、ハリーにはAの気持ちがよく分かった。
ああすればよかったとか、こうすればよかったとか、そんな思いは結局、全て手遅れになってから蘇るのだ。
泣き腫らした赤い目で、大声で泣くAを見て夫妻も啜り泣き始めた。
自分達よりも大声で泣くAが、多分夫妻には、少しだけ嬉しかったんだと思う。
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黒猫_Kurone - 2人の仲がいいことがわかるイラストでめちゃ好き…。番外編も面白くて、わくわくしながら読んでます！作者さん、素敵な作品とイラストを提供していただきありがとうございます！！ (6月17日 15時) (
レス) @page37 id: 02580b15cb (このIDを非表示/違反報告)
黒猫_Kurone - ダンスパーティーで、フレッドの活躍や、主人公ちゃんがハリーの目の色に合わせて、ドレスを選んだというシーンとかめちゃ好きです！閑話のハリーと主人公ちゃんのイラストで、ハリーかっこよすぎて惚れるし、主人公ちゃん、天使…めちゃかわいい…(チーン (6月17日 13時) (レス) @page37 id: 02580b15cb (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - ダイアナさん» コメントありがとうございます❕セドリックの最期は本当に切ないですよね😖 (6月5日 0時) (レス) id: d9295642a6 (このIDを非表示/違反報告)
ダイアナ(プロフ) - セドリックｳｳｳｳｳｳｳ (2023年3月3日 6時) (レス) @page30 id: 43545663d6 (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - みのみのさん» コメントありがとうございます❕私も、この炎のゴブレットがハリー・ポッター作品の分岐点のようなお話だと思っているので、とても嬉しいです!!イラストを公開するのが何気に一番緊張するので、ドンピシャと言っていただけると本当に安心します😖 (2022年9月19日 21時) (レス) id: 6bc61cb134 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とま | 作成日時：2022年9月15日 17時
