4:かこのおうじ ページ39
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「小さい頃から、人間の感情とか読み取るのが得意。それは多分、親のせいなんやけど。」
luzさんは、自分の昔話をし始めた。
辛いのか、楽しいのかよく分からない表情で。
家が裕福なluzさんは小さい頃からずっと、
厳しい家庭で育って来たんだそうだ。
確かに、luzくんは、
目上の人と話す時の言葉遣いが綺麗だし、座っている時やたっている時、どんな時でも背筋が伸びている。
きっと親にちゃんとしつけられたんだなって、そんな予感は的中した。
「だけど中学の時に、すごく仲のいい女友達と男友達がおってな。そいつらは、良いこと悪いこと、いろんなこと教えてくれた。」
「……。」
「そんな友達の影響で、親に歯向かう時期でもあったんよなぁ、中学時代は。」
「……そっか。」
「本当に、大好きだった、その2人のこと。」
「うん。」
「だけどそいつらも結局、俺の物を盗んで俺のファンとかに売ってたんだよな。文房具から……体操服まで。大変やったなぁ、思い出すよ。」
「……」
それはつまり、友達に裏切られたってことだろうか。
「やからもう、正直誰一人信用出来んくなって、今はもう全部偽りの関係。実はね。」
「……」
「でもたまにこんな俺が嫌になって、ずっと考えたりしたら1日眠れなかったり。それで倒れることは、中学生の時よくあった。」
「……」
「でも、もし過去に戻れたとしても……また俺は、2人と友達になると思う」
「……」
「俺って馬鹿。ほんま、呆れる。」
って、なんでここまで話してんだろうね、と
luzくんは慌てて立ち上がった。
私はその場から動かない。
だって今の話、とても可哀想。
luzさんは友達が多くて羨ましいと心から願っていたけど
luzさんにとってそれは上辺だけの関係でしかなくて、本当は人を信じたくても信じられないということ。
それを知ってしまったら、
luzさんがいい人に見えてきた。
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山下(プロフ) - ゆんたさんの作品が大好きで一文字でも多くゆんたさんの書く文章が読みたいです。もし宜しいのであれば続編を読みたいです。 (3月31日 3時) (レス) id: 12bd432e17 (このIDを非表示/違反報告)
めぞぴあの(プロフ) - 続編、読みたいです… (8月30日 19時) (レス) id: 269b094ab0 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 続編読みたいです!!!!!!!!!!!!!!!!! (2023年3月25日 9時) (レス) id: 0407d7412e (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - コメント失礼致します。この作品、好みドンピシャです…!ここまで刺さる作品今まで読んだことがなかったので読んでいてとても楽しかったです! (2022年12月31日 17時) (レス) id: cb0bd95209 (このIDを非表示/違反報告)
まちゃん(プロフ) - コメント失礼します。最高の作品でした。今はパスワードがあって見られませんが、いつか全体公開にしてくださる日を待ってます!!!いつか続編見たいです! (2022年10月31日 23時) (レス) id: 3a7614e975 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆんた | 作成日時:2018年6月19日 19時