【名探偵コナン】僕があいした、ただひとりの君へ【スコッチ】

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『...それ、楽器？』
「はは、中身はちゃんと入ってるよ」



とある日の午後の公園。
ロスの一件から少し時は経っていて、またも偶然任務で近くに居ることを知ったスコッチは彼女に連絡をした。


良かったら、少し一緒に散歩しないか、と。




呼び出された場所へと向かえば、ベンチに腰掛ける彼の隣には黒いケースが一つ。
ライフルケースとしてカモフラージュしているのか否か気になった彼女は、ふと会話が途切れた際に尋ねた。



『ギター？ベース？弾けるの？』
「ベース。弾こうか？」
『いいの？』



そう言った彼女の周りにぱあっと花が飛んだ気がするのは、ナントカフィルターがかかっているせいだろうか。


いやいや、と頭の中で首を振って、彼はそれを取り出すと弾き始める。




「次の任務、一応バンドマンっていう設定で潜り込むからさ、久しぶりに練習しようかと思ったんだけど、ホテルじゃ気が引けてな」
『へぇ...他のメンバーは？』
「バーボンとライ」



一瞬彼女はライ、楽器なんて弾けたのか、と思ったけれど、器用な事は知っているから、何でもやってのけるのだろうと流す事にした。
そんな事より、今は目の前の彼のことを何でもいいからもっと知りたい、なんて下心は隠して。



「何がいい？」
『何なら弾けるの？』
「知ってる曲なら、割と何でも？」



得意げに笑いながらふと顔を覗き込まれた事にどきりとした彼女は、頬に熱が集まったのを悟られないよう、思案するかのように視線を下げた。



『じゃあ...Tomorrow』
「Stag beetle？渋いね」



すぅ、と息を吸って彼は弾き始めた。彼らしい、優しい音だと思った。ベースの事は詳しくないけれど、そう思わせるには十分な音色だった。





『...It looks as though they're not here to stay
...Oh, I believe in tomorrow』
「！」



ゆっくりとした時間が流れる。1回目のサビを弾き終えたところで、ふ、と彼は指をとめた。



「歌、上手いな」
『そう？初めて言われたわ』
「発音綺麗だし」
『母国語だからね』



じゃあHinder！は？
弾けるよ
A Easy Day's Morningはどう？
それ俺も好き



なんて言いながら、すっかりメドレーとなった2人の弾き語りはThe Actual Thingを歌い終わったところでふとやんだ。
世界平和を願うようなその歌詞なんて、笑い飛ばすような組織に属しているくせに。

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