【d！】彼女はまるで屠所の羊 (ページ23)

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羊が２３匹ページ23

流石にこのまま母に勘違いさせておいたら後々面倒くさくなりそうで、急いで訂正しようと思ったのだが……。

「あ、そうなんです！！
　僕、Aさんの彼氏で…「お母さん、違うからね！？」」

ゾムがいきなりそんなことを言い出したので、食い気味に訂正した。

全く、何てことしてくれるんだ。

これで母に彼氏だと思われるのは非常に面倒くさいっていうのに！！

「あら、、そうなの。お母さんの早とちりだったのね、ごめんなさい」

「ちぇー、なんで止めたん」

母は分かってくれたようで、謝りながら落としたコップを拾っていた。

一方でゾムは、いかにも不服ですって顔をしながらこっちを見てくる。

だが、ゾムが私と付き合っていると言ったら、困るのはゾムの方だろう。

「……何、そんな不服そうな顔して。それを言って困るのはゾムなのよ？」

だって私は坂崎さんをいじめたから停学になったのだから。
そんな奴と生徒会員が付き合ったと知れれば、ゾムのほうが困るに決まってる。

「分かったなら、さっそく遊びましょ？時間は有限よ」

「……分かった」

なんとかゾムからの了承を得たのは良いのだけど、先ほどの会話で思ったことがある。

思い返せば、今までの人生の中で恋愛はしたことが無かった。

彼氏はいなかったし、そもそも恋をしたことすらなかった。

そんな私は後半年で死ぬ。

だったら恋をして、彼氏作って……なんて夢みたいなこと、したいとは思う。

でも、半年で死んでしまう私を……それもどのように死ぬのか、どこで死ぬのか、誰に殺されるのかすら分からない私を、いったい何処の誰が愛してくれるというのだろう。

あと半年、私は誰にも悟られず、死んだことすら気づかれないように……のうのうと生きようと思った。