【d！】彼女はまるで屠所の羊 (ページ20)

今日:15 hit、昨日:262 hit、合計:114,515 hit

羊が２０匹ページ20

翌日、いつものように外を走っていると、珍しく中学生くらいの男子が走っていた。

普段のこの時間はお年寄りの方が健康維持のために走ってるのを見かけることはあっても、中学生は見たことがなかった。

走りながら少年を見つめていると、目があってしまった。

彼の瞳は淡いピンクに宝石のようにキラキラと輝いている。

表すならパパラチアサファイアの様な……そんな感じ。

折角なので笑顔で会釈しておこう。

「えっ……！？か、かわっ……！」

その瞬間、そう言ってスピードを上げて何処かへ走っていってしまった。

なんだ、やはり中学生と言うのは初心なのか？

いやでもゾムもあんな感じか。

ってことは、ゾムの心はまだ中学生なのかもしれない。

そんな馬鹿なことを考えながら今日も走った。

家に帰ると珍しく母が居た。

なぜ母が……？私は何か悪いことをして……いや、停学の時点で悪いことしてるわ。

「お母さん？珍しいね、家に居るなんて」

「……あぁ、A、お帰り。ごめんね、大事なお話があるの」

母は自分の座っている対面の椅子を指差しながらそう言った。

なるほど、大事な話があって珍しく家に居たのか。

私は大人しく母が指差した椅子に座った。

「ねぇお母さん、お話って？」

「A、今までごめんなさい。
　食事代だけここに置いて、ネグレクト……だったわよね」

いきなり何を言い出したかと思えば……ネグレクトなんて今に始まったことではない。

何を今さら……。

「お母さんね、先生にAが停学ですって言われて、私、今までAをしっかり見てあげられてなかったって思ったの。
　だからね、許して貰おうなんて言わない。でも、今日からお母さんが家事をするわ！！」

「はぁ……！？」

え？お母さんが家事？本当に言ってるの！？

てか私、お母さんが厨房に立ったところ見たこと無いんだけど、、母は料理が出来るのだろうか？

「そうよね、驚くわよね……でも、お母さんも変わろうと思うの！
　このために今日はお休み貰ったのよ！今日は一日、お母さんと一緒に遊びましょう！」

「は、はぁ……」

母は、意外と阿保なのかもしれない。

でもこの自分勝手な感じ……やっぱり家族は似るものなのか。

そう思いながら、母の誘いに了承した。

正直、母も父もなんとも思っていない。

そのおかげで私は自由に色々出来たから。

あれ、そう言えば今日もゾム来るのよね？

今日は母が居るみたいだけど……まぁ、なんとかなるか。