冥界の主と少年。 (ページ28)

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お仕事現場。ページ28

「あーこれはダメでしょはい地獄行け」

仕事用のディスクに頬杖をついて、目の前にいる死者の魂が持っている履歴書に「地獄行き」の判子を押す。

今日は珍しくちゃんと仕事をしている。褒めて欲しいもんだ。

「褒めて欲しいって…子供ですかあなたは」

仕事の手伝いに来た少年がすかさず突っ込んでくる。

「子供ゴコロをいつまでも持っていて悪いか」

もうこいつの読心術には慣れてしまっていた。

次々とやってくる死者に少年は番号札を配り、

私は一列に並んだ死者をテキトーに天国行きと地獄行きに分ける。

「おや、小さいのに偉いですね～ボク」

一人のおば様が少年に向かって話しかけた。

おば様よ…外見に騙されてはいかんぞ…

見た目は5,6才だけど実際のところ年齢不詳だからな!?

ある意味年齢詐欺だぞソイツ!!!

「いえ…そんなことありませんよ」

お前もお前で謙遜するな!!

イライラしてきた私はとにかく判子と用紙にあたる。

「お前は、地獄に行けっ！」

ダンッと周りに響くくらい思いっきり判子を用紙の上に押し付ける。

「冥界さん、そんな事したら紙が破れて貴方の仕事が増えるだけですよ」

「うるせーっよ!!」

次々と判子を押していくうちに、いつの間にかあのおば様の番が来た。
判子を押そうとした瞬間、おば様の言葉で私はピタリと動きを止めた。

「お母さんも助かりますよね～」

「親子じゃねぇよ!!」

なぜだ!!なぜみんな同じことを聞く!!

「なんでなんだ!! コイツなんて育てた覚えねーよ!!!」

「僕だってあなたに育てられた覚えはないです」

「うるさいなっ！第一お前はなんで読心術なんてスキル持ち合わせてんだ!! 心の中土足で踏みにじられてる感じで気分悪いんだよ!!」

「あの…」

そう怒鳴っていると、少年は私の言葉を遮り、向こうを指さした。

「なに!?

こんな時になんだ!! そう思って少年が指さす方向を見ると、そこには砂煙を上げて天国の門へダッシュするあのおば様の姿が。

「やられましたね」

「は？」

意味がわからなくて、少年とあのおば様を交互に見る。

「冥界さん、さっき判子押せてませんよね？」

「お、おう…」

さっきは怒るのに必死で判子は押していない。証拠に、判子にはまだインクがついている状態だった。

「あの履歴書もおそらく偽物です」

「え」

「まだわかりませんか？詐欺ですよ詐欺」

「…ジーザス!!!」

～冥界の主観察日記～

･冥界さんは騙されやすい。

「どうしてくれんの…仕事増えたじゃん…」