冥界の主と少年。 (ページ20)

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海。ページ20

太陽の光が照りつける白い砂浜。
カモメの鳴き声と、波の音が静かに響く。
あまりの暑さと眩しさに私は目を開けた。
あれ……ここ…何処だっけ…？
あれ…なんで…こんなに静かなんだ…？
私は…何をしてたんだっけ…

＊

「夏だっ!! 海だっ!!水着だぁっ!!」

「冥界さん、性別が行方不明ですよ」

商店街のくじ引きで海水浴場の券が当たったのでみんなで海へ来ている。

「おー海って広いんだなー」

「兄貴!! 日傘を!! 焼けてしまいます!!」

「兄貴!! ミロを!!水分補給して下さい!!」

「わりぃな…」

何故か兄貴とその子分たちまで一緒に来ているがこの際気にしないでおこう。

「波に気を付けてね～」

かごバッグを持って日傘をさしている鈴芽はすっかりお母さんポジションになってしなっていた。なんか申し訳ない。

「さぁ!!泳ぐぞ!!」

日焼け止め塗ったし、浮き輪も持ったし、準備万端で海に飛び込もうとすると少年がやってきた。

「あれ、お前も泳ぐのか？」

「何か問題でも？」

少年はどっちかって言うとこう言うイベントには参加しなさそうなのに、今回はどうやら参加する気満々のようだ。

「それよりも冥界さん、なんですかそれ」

「何って…浮き輪だけど」

この子は浮き輪と言うものを見たことがないのだろうか…

少年の肩がプルプルし始めた。必死に笑いをこらえているようだ。
ようやく落ち着いたかと思ったら、少年は得意のゲス顔で私を見上げてきた。

「あんた、金づちだったんですね」

「はぁ!?!?」

流石の冥界の主も堪忍袋のおが切れた。

「あああもうあったまに来た!! いいか!!今からお前と勝負する!!」

「はぁ？」

「一番速く向こうの岩にタッチしたほうが勝ちだ!!」

「なんですか急に…大人気ない」

確かに大人気ない競争だが私は必死だ。

「兄貴っ!! スタート合図頼んだ!!」

「お、おう…」

「ウオオオオオオオ!!」

あまりにも必死過ぎて、合図がある前に私は海へ飛び込んだ。

「フライングだぞ…」

「聞いてませんね… まぁバカはほっといて遊びましょうか」

そんなことになってるとは知らずに私は猛スピードで岩に向かって前進し、波に流されてしまったのだった。

＊

「あー…」

それでどこかに流れ着いたのか。見渡すとまさに漫画などでよく見る無人島だった。

っていうか、

「どうやって帰るんだよぉお!!!」

～冥界の主観察日記～

･冥界さんは無人島でも生きていける。

「いやいや無理だから!!冥界の主の力買いかぶり過ぎだから!!」