検索窓
今日:1 hit、昨日:61 hit、合計:234,192 hit

第2話。 ページ34

「…え?」

角を曲がって一番最初に見えたもの。

それは、

「渡辺さん…」

大きな荷物を持って気まずそうに笑う田ノ浦くんだった。

「………」

私は動揺した気持ちをグッと押し殺して無言で彼の横を通り過ぎる。

何してるの?

こんなところお兄ちゃんに見られたらどうするの?

私、あんなにひどいこと言ったんだよ?

田ノ浦くんに聞きたいことは沢山ある。

でもだめ。

もう貴方から離れるって決めたの。

「渡辺さん、話を聞いて。」

田ノ浦くんはそう言って私の肩に触れる。

「触らないでっ!!」

でも私はその温かい手を思いっきり振り払う。

田ノ浦くんはそれに驚いたのから目を大きく開いて私と目が合うなり下を向いた。

田ノ浦くん…

そんな顔させてごめん。

でもお願いだから帰って。

貴方に合わせる顔なんてもうないの。

「……」

私はそのまま田ノ浦くんに背を向けて玄関の扉を開ける。

「待てよっ!!!!」

急な大声。

私は反射的にその声の主の方を振り返る。

「いつも勝手なんだよ君は!」

「やめて、来ないで…っ」

「自分ばっかり辛い顔してふざけんなよ!」

そういうと彼は私の腕を掴んで自分に引き寄せた。

「俺だってつれぇんだよ、まじでムカつくんだよ」

「お願い…離して…お兄ちゃんが帰ってきちゃうから…」

「そんなこと知るか。俺が今までどんな気持ちでいたと思ってんだよ」

田ノ浦くんこそ身勝手だよ…

これを見られたら私がどんな報復を受けるか知ってるの?

何も…

何も…

「何も知らないくせにっ!!!!」

だめだ出るな涙。

もう貴方の前で泣かないって決めたのに…

「もうほっといてよ…もう辛いの…貴方といるのが…」

貴方にずっと嘘をついていた自分が…

幸せだと感じている自分が…

本当は来てくれたことが嬉しいと思っている自分が…

お兄ちゃんが…

「…怖いの」

頭の中がぐちゃぐちゃで自分でも意味がわからない。

私はそのまま地面に倒れ込んだ。

「好きなんだ…」

「……っ」

「どうしよもうなく君だけが」

「……う…ぅ」

「こんなこと初めてで俺だって自分がこぇえよ。」

「…う…ぁ…」

「君が好きだ渡辺さん」

「…うぁぁぁん」

こんなに声を出して泣いたのはいつぶりだろうか。

いつの間にか私は声を押し殺すことに慣れてしまって…

貴方の言葉が…

純粋でまっすぐな貴方の気持ちが…




荒んだ私の心にまっすぐ刺さって


ものすごく痛い。

第3話。→←第1話。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.8/10 (724 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1100人がお気に入り
オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

kitty(プロフ) - コメント失礼致します。続編のパスワードを教えていただきたいのですがよろしいでしょうか? (2021年3月1日 2時) (レス) id: ec02268633 (このIDを非表示/違反報告)
ツミキ(プロフ) - こんにちは!コメント失礼します!続編のパスワードをお伺しでもよろしいでしょうか! (2021年2月20日 21時) (レス) id: 38aa17f1c1 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼します!よろしければ続編のパスワード教えていただきたいです!よろしくお願いします。 (2021年2月20日 8時) (レス) id: 69753dea94 (このIDを非表示/違反報告)
なの(プロフ) - こんにちは、コメント失礼致します。いつも作品楽しく読ませて頂いております。もしよろしければ続編のパスワードの方お伺いしてもよろしいでしょうか?よろしくお願い致します。 (2021年2月15日 7時) (レス) id: ad7059f36c (このIDを非表示/違反報告)
あられ@帝国民(プロフ) - コメント失礼します!続きがすごい気になるお話でした!!もし主様がよろしければ、続編のパスワードを教えて頂きたいです!よろしくお願いいたします! (2021年2月14日 14時) (レス) id: dc7474ee4c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:まりあ | 作成日時:2019年6月4日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。