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「いやちょっと待て!やっぱり不審者だろ!止まれ!」

場に流されかけていたが、漸くまともな判断ができるようになった警備員が首を振り叫ぶ。だが、不審者である彼らにはあまり効果はなかったようだ。

「あ、そうだ!瀬川くん、あれ見せてくださいよあれ!賑やかな奇術!」
時代錯誤の山吹色の着流しの男が杯片手に囃し立てる。

「いや、ちょいと待て?俺のあれはそういうのじゃあ_」
こちらも時代を疑うような藍色の着物に紫の袴を身に着けた男が答えるが、それは一つの文として完成することはなかった。

「そうだよ瀬川ァ、酒の肴にいいじゃあないか。ついでにそこの殿方どもにも見せてやんな」
「そうじゃそうじゃあ、二重の意味で肴(魚)じゃろ!?はははは、こりゃあ愉快じゃわい!」
黒のバンドゥブラに赤いパンツの女と緑のロリータを身に着けた少女(?)が囃すように声を重ねたからだ。

「おい、話を聞いていなかったのか!大人しく__」
焦ったような警備員の声はカーテンコールにかき消される。

「それでは此れより稀代の魔術師が一隅、闇夜の歌舞伎役者こと瀬川率いる一座による一夜限りの奇術舞台の開幕開幕!」
「待て、待て!なんだそのこっぱずかしい二つ名は!?俺はそんなの名乗った覚えがないぞ!?」
「さァ、闇夜さまのお通りだよ!酒を出しなァ!!」
「うはははっ!こりゃあいい、闇夜じゃあ!!酒を出すのじゃあ!!」

ぼそ、と零れた声が、市役所(かいじょう)の照明を消した。突然のことに警備員たちが驚き慌てる中、一段高くなった舞台と客席が形成されてゆく。常識的に考えればありえないことだが、だからこそ逆に脳は活動を停止し、すんなり受け入れることができた。見上げると、頭上には星すら輝いている。なんだこれは。

薄蒼い闇の中、何処からか一縷の光が藍の着物の男__瀬川を照らす。

「さあさあ皆さん、手始めにお目にかけますは、世にも不思議な口寄せの術!この何もない空間から、見事にそれはそれは美しい金魚を呼び寄せ、使役してみせましょう!」

__だから、俺の異能はそういうのじゃあない。
瀬川はもう一度口の中でぼやく。
異能は自分にとって盾で、防壁だ。それ以上は割って入らせないという心の防衛ラインだ。そう軽く見世物感覚でぽんぽん出すもんじゃあないのだけれど。

_あと、
瀬川は心の中で大切なことを付け加える。
_お前金魚って言ったけど鯉な。俺の異能鯉な!なんで間違えるんだよ鯉な!!

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ラハル - アノさん» ありがとうございます!他の作者様の素敵な文に負けがちですが精一杯やらせていただきますのでよろしくお願いします!! (2017年3月5日 22時) (レス) id: a67c8f74a0 (このIDを非表示/違反報告)
神羅(プロフ) - アノさん» お褒めに頂き光栄です(*´∀`) 更新遅れてますが頑張りますね(^o^ゞ (2017年2月24日 20時) (レス) id: a22dd21ad8 (このIDを非表示/違反報告)
アノ - 凄く楽しく見せてもらっています!凄くこの作品好きなので更新頑張って下さい!応援しています! (2017年2月24日 20時) (レス) id: 09388b2c82 (このIDを非表示/違反報告)
ラ八ル(プロフ) - 花園イリアさん» ありがとうございます!とても嬉しいです!これからも頑張るので宜しくお願いします!! (2016年11月25日 22時) (レス) id: dcc66ec7ef (このIDを非表示/違反報告)
神羅(プロフ) - 花園イリアさん» 有難う御座います! ご期待に添えるように頑張りますね(*´ω`*) (2016年11月22日 9時) (レス) id: a22dd21ad8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:神羅 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2016年9月5日 18時

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