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仕事終わり、いつも通り喫茶ミシェルへ向かうマーコ。
テラス席には、すでにタロウの姿があった。
「ひどいよ、タロさん。」
「あ?」
「なんで来てくれなかったの!?!」
「んな約束してねーだろ。」
「ほったらかしにするの!?シンイチはタロウさんを慕ってるのに!!」
「お人好しは大概にしろって言ったろ。お前には関係ない、あいつの問題だ。」
「でも!困ってるんだよ?助けてあげなきゃ。」
「・・・勝手にしろ。俺を巻き込むな。」
そう言って、タロウはその場を去ってしまった。
残されたマーコは、冷え切ったコーヒーとタバコの吸い殻を恨めしそうに睨むのだった。
翌朝も、その翌朝も。
結局、タロウがトレーニングに現れることはなかった。
この日も、シンイチとマーコふたりで練習に励む。
マーコが図書館で借りて来た本や雑誌を元に、体力づくりに励んでいるがなかなか成果も出ず、徐々にやる気が削がれていくのを感じていた。
「っ・・・やっぱり無理っすよ。こんなの・・・素人が適当にやったところで成果なんて出ませんって・・・」
「うん・・・だけど、やれることやらなきゃ。もう残り3週間だよ?」
「マーコさんには、手伝ってもらって申し訳ないっすけど・・・やっぱり諦めます・・・最初から無理だったんすよ。」
「シンイチ・・・」
やめだ、やめだ、と撤収を始めるシンイチをこれ以上引き止める術はないとマーコも諦めて帰る支度を始める。
「だから言ったろ。お人好しは大概にしろって。」
「?タロさん!」
「タロウさん・・・」
「シンイチ、てめぇはいつもそうだよ。結局、今も昔も逃げることしか脳がない負け犬だ。」
スーツ姿のタロウは、冷め切った目でシンイチを見下ろしていた。
「行くぞ、マーコ。」
何も言わず、俯くだけのシンイチを盗み見てマーコはタロウの背中を追いかけた。
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作者名:サリー | 作成日時:2020年10月14日 17時