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次の日
仕事を終えたマーコは、喫茶ミシェルの周辺を隈なく捜索していた。
消えた指輪の行方を追っているのだ。
タロウが投げたはずみで、転がって遠くまで行ってしまったのだろうか。
少し遅れてやってきたタロウは、地面を這いずり回るマーコの腕を掴み彼女を立たせる。
「こんだけ探して見つからねぇんだから、もう諦めろ。」
「ダメだよ、婚約指輪だよ？大切なものだよ。見つけなきゃ。」
シンイチの時と同じ目をしている。
タロウは、きっと今回もマーコが折れることはないのだろうと諦めた。
「はぁ・・・とりあえず一杯飲んでからだ。そのあと、向こうのほうも見にいくか。」
「ほんと！？ありがとう、タロさん！」
「ったく、お前に付き合ってたらロクなことねーな。」
日が暮れて、あたりが暗くなってきた。
喫茶ミシェルから少し離れたあたりまで捜索に来ていたタロウとマーコだか、視界が悪くなったことで諦めて帰ることにした。
夕方になると、やはり気温も下がるし風も冷たい。
身体が冷え切ってしまっていた。
「・・・マーコ、平気か？」
「うん。平気だよ。」
「・・・なんかあったかいもんでも食いにいくか。」
喫茶ミシェルでは、毎日のように顔を合わせているふたりだが実は、ふたりで夕食を取ったことはなかった。
言うなれば、初デートの口実が出来たわけだ。
タロウの誘いに、少しだけ驚いたマーコだがすぐに笑顔になる。
「うん！！タロさん、なに食べたい？」
「なんでも。お前が決めろ。」
いつも帰りに通る商店街を歩きながら、何がいいかとぶつぶつ言っているマーコ。
開店祝、という文字に釣られて選んだのは綺麗なおでん屋さんだった。
「あー、美味しいー！あったまるー。」
大根やこんにゃく、卵にちくわぶ。
てんこ盛りのマーコのお皿に比べて、タロウのには大根のみが乗せられていた。
タロウにとって、メインディッシュは日本酒だった。
「タロさんって、ほんとにお酒とタバコ好きだよね。あ、あとコーヒー。苦いものばっかりじゃん。」
「そうだな。」
「そんなに美味しいの？」
「あ？なんだよ、飲みてぇの？」
「んー。」
タロウが好きだと思うものは、自分も好きでありたい。そんな思いがマーコの心を駆け巡る。
どうしてそれが好きなの？
その理由が分かれば、自分のことも好きだと思わせるための材料になるかもしれない。
そんなことを考えた。
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作者名：サリー | 作成日時：2020年10月14日 17時
